バック・トゥ・ザ・フューチャー再び デロリアンをEV化した男

公開 : 2019.12.01 11:50  更新 : 2019.12.01 17:44

苦労したのは冷却と配線

このクルマのすごいところは、テスラ製コンポーネンツがきれいに収められている点だ。「電動モーター自体はテスラが『スモール・ドライブ・ユニット』と呼ぶもので、P70Dと同じものをフロントに搭載しています」とタウンセンドはいう。

彼はマウントやブラケットなどを専用に設計している。そしてドライブシャフトは完全な並列だ。ウェインマンやタウンセンドはテスラのバッテリーを分割し、デロリアンの前後に搭載している。ただしP70Dのバッテリーすべてを搭載することはできず、セルは多少減らされている。

テスラ製パワートレイン
テスラ製パワートレイン

「最大の困難はモーターやインバータなどの冷却でした。ノーズに2基のラジエターを設置したのですが、必要な冷却能力を得るために試行錯誤を繰り返しました。これは他のクルマでも同じでしょうけどね」とウェインマンはいう。

そしてもう1つの問題は配線だ。70年代後半から80年代前半のアナログなシステムを持つクルマに、21世紀の電子装備を搭載するのは難しいだろう。タウンセンドによれば「われわれは独自のCANバスを設計し、すべての機能が動くようにしました。デジタル式のインストルメントパネルも開発しましたが、オーバーヒートを繰り返すためまだ未完成です」

80%程度の完成度

デロリアンに試乗するときがきた。トヨタオーリスから流用した電動パワーステアリングを搭載している。タウンセンドによれば、「もともと重たいATに加え180kgのPRV型V6エンジンを搭載していました。まだ正確な車重は測定していませんが、オリジナルと変わっていなくても驚きません」とのことだ。

赤いスタートボタンを押せば、デロリアンは目覚める。そして芸術的なレバーをDにシフトすれば走り出すのだ。彼は「あるひとはボートのようだといいますが、飛行機のようだと感じるひともいるようです」と語る。

デロリアンEV
デロリアンEV

デロリアンは魔法のように走り出し、きしみ音などはまっくない。オリジナルのデロリアンが売れ残っていたのは、その価格に対するパフォーマンスの低さが大きな理由だ。しかしこのクルマは80%程度の完成度であり、今後ソフトの変更によってさらなるパフォーマンスを獲得するという。

それに加え、開発費用は20万ポンド(2660万円)にも達するという事実が、わたしにアクセルを踏み込むことを躊躇させる。このデロリアンEVが完成した後、本格的に走らせてみるのが楽しみだ。クルマのエネルギーはリチウムイオンから供給されているが、73歳になるウェインマン自身のエネルギーはどこから来ているのだろうか。

彼は人当たりも良く、非常に活動的だ。次のプロジェクトとしてジャガーEタイプも用意されている。1958年型と1965年型のコルベットを所有し、ベイシティ・ローラーズのバイバイ・ベイビーを書いた男を見くびってはいけない。

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