優雅に走るスポーツカー シボレー・コルベットC1とメルセデス・ベンツ190SL 後編
公開 : 2019.10.05 16:50 更新 : 2022.08.08 07:52
1950年代半ば、GM(ジェネラルモーターズ)とメルセデス・ベンツはスタイリッシュなスポーツカー、190SLとコルベットC1を生み出しました。スポーティなデザインとは裏腹に、両車ともにエンジンは非力でしたが、改めてそのエレガントさには惹き込まれるものがあります。
対象的な2台のインテリアデザイン
メルセデス・ベンツ190SLは、4輪ともにサスペンションはスポーティな独立懸架。フロントはポントン譲りのサポートブリッジ付きのダブルウイッシュボーン式で、リアはスイングアクスル式だ。ちなみにコルベットはフロントのみが独立懸架。メルセデス・ベンツ製スーパーカーをずっと身近な存在にしていた。
190SLのエンジンはスムーズに回転するが、ややうるさく感じられる。ゲートを右往左往するマニュアル・シフトノブのタッチはデリケート。スロットルは軽く、図太いコルベットC1のノイズ並みに1本のマフラーから発する190SLのエグゾーストノートも勇ましいが、洗練されてもいる。
活発な性格も期待するとこだが、メルセデス・ベンツらしく、ハリウッド・スターによく似合うラグジュアリーな雰囲気を漂わせている。しかし大げさでもない所が良い。
今回の車両は英国では大きな輸入車ディーラー、DDクラシックを運営するダニー・ドナバンが30年以上所有するクルマ。SLに見られがちなサビも一切なく、ダークブルーのインテリアがアイボリーのエクステリアと完璧なマッチングを披露する。
アイボリーのダッシュボードにはVDO社製のメーターが並び、活気のあるサウンドとは対象的に控えめ。朱と白に塗り分けられたコルベットC1とは別世界といえる。一方でアメリカ生まれの2シーターの方は、ダッシュボード正面に左右対称のコブが並び、スイッチやボタン、フレーム周りはまばゆく光るクロームメッキ仕上げ。真っ赤なレザートリムが眩しい。
テールのデザインは1950年代のアメ車
コルベットC1は一見、大きなステアリングホイールとシートとの感覚が狭く座れるのか疑問に思えたが、フカフカのシートが深く沈み込むから問題なかった。居心地は快適といえるものの、やはり白くなめらかなステアリングホイールはずっと手前側に感じられる。
真っ赤なフロアからはATの長いセレクターレバーが伸びる。選ぶといっても、ローとドライブの2種類だけれど。レバーのストロークが大きく、どこに入っているのかは見れば直ぐにわかる。低速域でのコルベットC1は、190SLと異なって操作に力がいるし、運転がしにくい。
大きなステアリングホイールをしっかり切らないと充分に曲がらないが、重さは漸進的に増えていく。どちらのクルマもブレーキは弱く、減速は計画的に行わなければならないが、ブレーキが温まると制動距離は少し短くなった。
赤いC1は初期型で、ボディサイドのえぐれたラインはまだ彫られておらず、柔らかく弧を描き頂点にエッジが付いている。ドアハンドルは外にはなく、インテリア・ドアトリムの上端に付いた円柱部分から伸びていて、小さなボールがあしらわれている。
エクステリアデザインは、いかにも1950年代のアメ車的。2本のミサイルがリアフェンダーに刺さったようで、その後端にはブレーキランプとウインカーが一体になったテールランプが付く。
フェイスリフトを受けると、ボディサイドが削られると同時にリア周りの造形もなだらかに改められ、テールライトはボディに埋め込まれた。マフラーカッターは、ボディの比較的高い位置に顔を出している。
シボレーの研究開発部門の指示通り、低重心と小慣性を目的に、ボディのオーバーハングは最小限。シャークノーズが低くうずくまる190SLと比較して、コルベットC1のボンネットは高く膨らみ、顔つきはどっしりとしている。