グループBラリーに実在 プジョー504ピックアップ・ラリー復活劇 後編
公開 : 2019.10.06 16:50 更新 : 2021.02.02 12:45
スクエアなプジョー504に、ピックアップトラックが存在したことはご存知でも、1980年代のグループBラリーに出場していたことを覚えている人は殆どいないでしょう。実用車として生まれ、英国でラリー・レプリカとして生まれ変わったトラックは、新たなステージを楽しんでいます。
グッドウッドフェスティバル参加を目指す
プジョー504ピックアップ・ラリーのレプリカを生み出したアラン・ウェストンは、経緯を振り返る。「アダムはラリーカーのコレクションを持っていて、大切な友人です。様々なラリーイベントで彼のマシンをドライブさせてもらっていたのですが、自分のクルマでも参加できるように、手伝いたと話していました。わたしにはグループBマシンを所有する余裕もなく、そこで生まれたアイディアがこのピックアップだったのです」
「彼の力を借りて、一緒にクルマを仕上げました。そして、他の人とは違うマシンが生まれたのです。作業中、われわれが手掛けているプジョーのことを話すと、みんな信じられないような反応でした」 ベースとなったクルマはeBayで、現物を見ずに購入した。コンディションは相当に悪いものだったそうだ。
ウェストンが自虐的ジョークで話す。「いくつか部品を外すと、状態がいかに酷いのかすぐに分かりました。サイドシルもリアのフロアもなく、シャシーもサビで欠損していました。最も状態の良かったところはエンジンルーム。ディーゼルエンジンはオイル漏れが酷く、そのオイルがサビから守ってくれていたんです」
そこからリビルドは、4カ月の目標でスタートした。テレビの企画があったわけではなく、ウェストンが自動車イベント、グッドウッド・フェスティバルの主催者へプジョー504ピックアップの件で手紙を出していたから。ラリーステージで走らせて欲しいと前向きな返事をもらっていたたのだ。
サイドシルや荷台はイチから作り直し
「サイドシルやシャシー、荷台などはイチから制作し直しました。別の友人がWRC風のロールケージを組んでくれました。ホイールハブは当時物のホイールを履くために、4穴のものへと交換。アダムが仕上げを担当していて、沢山のパーツがサウスヨークシャーのプジョー部品専門店から届きました」
「もちろんエンジンも組み直しましたが、とても楽しい作業でした。eBayで部品を見つけ、イアン・マイヤーズ・レースエンジン社へ送り、組んでもらいました」 仕上がったクルマは1980年代のワークスマシンと同じスペック。アダムが当時のレース参戦認可資料をインターネットで見つけたそうだ。
「504 TIのシリンダーヘッドを付けた1971ccです。どうしてもインテーク・マニホールドを見つけられず、ボルボ240用のものを改造し、アダプタープレートを付けてウェーバー45のツインキャブにしてあります。いまは専用カムを製作中で、装着すれば当時のマシンのように172psを発生できるはずです」
現代仕様なのはシートと、丈夫なパイプで組んだロールケージだけ。ウェストンがリビルドの様子を思い出すにつれて、作業の余りの大変さも思い出し、時折顔がゆがむ。「グッドウッドフェスティバルの開催直前、水曜日の夜にクルマが完成し、木曜日の朝にはイベント参加のために出発しました。でもラリーステージでは、3日間とも問題なく走りましたよ!」