グループBラリーに実在 プジョー504ピックアップ・ラリー復活劇 後編

公開 : 2019.10.06 16:50  更新 : 2021.02.02 12:45

一風変わったラリーマシンとしての価値

「運転した感覚はとてもソリッドで、挙動もつかみやすいのです。ラック・アンド・ピニオンのステアリングはパワーアシストが付いていませんが、そのおかげでタイヤの状態がつかみやすく、驚かされるような不意な動きもありません。車内のレイアウトも普通で実用的。燃料パイプが車内を通っているので、ガソリンの匂いがその気にさせてくれます」

「一度完成した時は静かでしたが、マフラーパイプを短くしてサイド出しにして、元気な音にしてあります。全長が長く、きついコーナーを曲る時はサイドブレーキ・ターンをする必要があるんです。運転はしやすく、複雑ですがそのアナログさが楽しくもあります。しかし、間違いなく地球最速の加速は披露しませんけれど」

プジョー504ピックアップ・ラリー
プジョー504ピックアップ・ラリー

ウェストンの取り組みは、504ピックアップ・ラリーへの注目を再び集めることにもつながった。当時のオリジナルマシンと同様に、多くの観衆の驚きと困惑を生み出しながら、見事な再デビューを果たした。多くの賞賛と笑顔を集め、一風変わったラリーマシンとしての価値を示したといえるだろう。

グループBへのノスタルジーは今でも冷めることはない。このプジョー504ピックアップもそれを証明している。当時のクラスメイトの中では最も大きなマシンだったが、2019年でも素晴らしい日々をウェストンと過ごしている。

オーナー:アラン・ウェストン

これほどマニアックなグループBマシンのレプリカ、プジョー504ピックアップを友人と作ったことを考えると、ウェストンは筋金入りのラリー・ファンだと思うかもしれない。ところが意外にも、彼のモータースポーツとの関わりはまったく別のところにある。

「20年間ほどは砂地でのオーバルコースで、普通のクルマを改造したオートグラス・レースに参加してきました。その後、BriSCA F2と呼ばれる(シングルシーターのオープンホイールマシンで、オーバルコースを周回する)ストックカーレースに参加していました」

プジョー504ピックアップ・ラリー
プジョー504ピックアップ・ラリー

「2018年になってから、このプジョー504を含むいくつかのラリーマシンに関わるようになったのです。実は去年の終わりにも、F2のレースに出場してもいます」

まったく別の分野とはいえ、20年以上のレース参戦の経験はクルマをリビルドする中でとても役に立っているに違いない。適した部品を見極める知見や、作業に必要な工具や道具への理解。また、難しい作業が山積したクルマを最後まで仕上げるという、最も需要な熱意や根気を備えることにもつながっているはず。

仕上がったグループBのプジョー504ピックアップと、BriSCA F2のストックカーを並べると、まったく別物のクルマに見える。だが、その根底には、ウェストンの情熱という点でつながっているのだった。

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