トヨタ・ヤリスGRMNで巡る ウェールズ・ラリーGB開催地の旅 新たなホームタウンも
公開 : 2019.10.06 18:50 更新 : 2021.03.05 18:46
空想の限界 ラリーの天気
A55号線を降りてデンビーへと向かい、スリン・ブレニグに到着すると、このクルマに相応しいタイトで起伏に富んだコースがわれわれを迎えてくれた。ここでのヤリスはサスペンションが嬉々としてショックを吸収し、ロータスが手掛けたスーパーチャージャー付きエンジンはその実力を遺憾なく発揮するとともに、ハードに走るほど見事なサウンドを響かせる。
本物の森林には絶対にヤリスを連れ出してはいけないと固く厳命されていたが、ビジターセンターを囲む道であれば、実際のラリーコースに近いところまで行くことができた。
全長6.4kmのブレニグのコースは湖に面しており、巨大なダムがフィニッシュ地点となるが、最後のレースとなる2回目の走行は、パワーステージとしてボーナスポイントを獲得することができる。
今年はまだ未勝利だが、フォードのエルフィン・エバンスは2017年の母国ラリーでの勝利の再現を、トヨタのクリス・ミークもポディウムの頂上を虎視眈々と狙っているのだから、ここはチェスター・レースコースに続いて英国にとっての勝利の場所となるかも知れない。
だが空想にふけるにも限界があり、写真撮影をしようと湖へと通じる道へヤリスを乗り入れてみたが、その巨大な水面に鏡のように静まり返った湖面を見つけ出すことはほとんどできなかった。
どうやらラリー開催の2カ月前にもかかわらず、鉛色をした空からの豪雨というラリー向けの天候を連れてきてしまったようだ。
非常に魅力的 でも完ぺきではない
最後の目的地、かつては隆盛を誇ったスランディドノで、海岸線へと続くB5113号線を舞台にふたたびヤリスはその輝きを放った。
このクルマはその2万6295ポンド(349万円)という価格にもかかわらず、もう少しで偉大と呼ぶに相応しいモデルになることができる。
スロットルレスポンスは見事で、荒れた路面でもそのディフェレンシャルは強烈なグリップを確保し、どんな状況でもサスペンションは平然とショックを吸収する。だが、その一方でブレーキペダルはフィールに乏しく、ギアシフトは節度感に欠け、ステアリングははるかに安価なフォード・フィエスタSTよりも曖昧なものでしかない。
つまり、確かに非常に魅力的なモデルではあるが、完ぺきという訳ではないということだ。
ラリー期間中、スランディドノにはサービス拠点とパドックが置かれる予定だが、かつてのトヨタのエンジン工場に隣接したディーサイドよりも多くの熱気がもたらされるとともに、より整ったインフラが準備されることになるだろう。