マツダ・ロードスター 「趣味車」なのに、30年間なぜ人気 開発者はどう考える?
公開 : 2019.09.30 12:10 更新 : 2019.09.30 17:08
「運転する楽しさ」、30年間で変化した?
30年という時の流れの中では多くの変化があり、クルマを取り巻く環境も随分と変わった。
アメリカでは日本車が販売ランキングのトップを占めるようになり、80~90年代の日本車に熱狂する若者たちが増え、JDMという言葉も生まれた。
中国が年間3000万台を販売する世界最大の自動車市場になるなど、誰も想像していなかっただろう。
日本ではミニバンやハイブリッド車が新車販売の多くを占め、30年前は当たり前だった18歳での普通免許取得者も減少し、若者のクルマ離れという言葉も生まれている。
ロードスター最大の魅力である「運転する楽しさ」は変化しているのだろうか?
「30年間でクルマは物凄く進化しました」(マツダ商品本部の山本修弘)
「しかし、環境対応、安全対応など、運転の楽しさに相反する要件も数多くあり、変えざるを得なかったこともたくさんあります」
「しかし、運転する楽しさは変化していません。人がクルマに乗って楽しいというのは、人が美しいものを見て美しいと感じたり、美味しいものを食べて美味しいと感じたりするのと同じ感覚です」
「生活スタイルや機械が進化しても、人間そのものが持っている感情の価値は変わっていないでしょう」
「だから私たちは4代目ロードスターを作るときに迷いがありませんでした。作るべきものは新しいクルマの価値ではなく、そのクルマに乗った人がどう感じるのかということです」
「運転する楽しさは、人が変わらない限り絶対に変わらない価値観です」
運転する楽しさは30年を経ても変わることではない。そう断言する山本氏は、4世代のロードスターでどのモデルが一番楽しいと感じるのだろうか?
「初代、2代目、3代目、4代目を作ってきましたが、4台を一気に乗ってどのクルマが一番楽しいかと聞かれたらそれはやっぱり初代です」
「なぜかというと非常にシンプルで、運転の楽しさを作ることに対してとてもピュア。80年代のクルマですから、安全性や環境性など色々なものを背負っていない」
「それには最新モデルでも勝てないと思います」
メーカー、「初代」大切にする気持ち強く
ロードスターが愛され続けるのは、マツダというメーカーの「長く愛されてきたクルマを愛でる文化を育てたい」という姿勢も大きく関わっている。
それを形にしたサービスも始まっている。
2017年12月にスタートした、初代モデル「ユーノス・ロードスター(NA型)」のレストアサービスと、失われた純正パーツの復刻がそれだ。
とくに、手ごろな価格で入手できる復刻パーツの販売は初代ロードスターのオーナーに非常に好評である。一例をあげてみよう。
ブリヂストンタイヤSF325 185/60R14
1989年の発売当時を再現したトレッドパターンや側面デザインを採用。
物理的に同様のモノを復刻させただけではなく、乗り味についても当時を再現するようマツダ三次自動車試験場にて作り込みが行われて開発された。
アルミホイール用センターキャップ
復刻したアルミホイールに合わせて塗装色を調整。
復刻アルミホイール(14インチ/5.5J/インセット45mm)
NA6CEに装着されていたホイールと同じデザインで再現。
現在の製法と塗装で軽量、高品質なアルミホイールとして復刻。
この他、ステアリングホイールやフロアマット、オープンカーのキモともいえるソフトトップも復刻されている。
驚くのはこのようなものまで復刻していること。部品交換や経年劣化で失われてしまう事が多いエンジンルーム周りのコーションラベル類は、当時の図面を参考に復刻。耐熱性に優れたラベルシートを使用している。
運転して純粋に楽しいと思えるクルマに乗りたいというユーザーの気持ちと、その気持ちを大事にするクルマを作り続けたいというメーカーの絆が続く以上、ロードスターはこれからも愛され続けるのだろう。