レス・イズ・モアは通じない ポルシェ・カイエン・クーペ エントリーモデルに試乗
公開 : 2019.10.07 09:50 更新 : 2019.10.08 11:12
BMW X6のライバルとなる、ポルシェ・カイエン・クーペ。エントリーグレードの仕上がりを、英国の道で確かめましたが、ポルシェというブランドに期待する内容ではないようです。
もくじ
ー911とのつながりを感じるボディデザイン
ー大型SUVでは最も運転を楽しめる1台
ーポルシェらしくない部分もちらほら
ーレス・イズ・モアは通じないカイエン・クーペ
ーポルシェ・カイエン・クーペのスペック
911とのつながりを感じるボディデザイン
ポルシェ・カイエン・クーペは、通常のカイエンがSUV過ぎるアピアランスで、実用的過ぎる、と感じている人に向けたクルマだ。名前も単刀直入で、カイエンのクーペということは明確。
否定的な人もいるとは思うが、スタイリッシュに振ったカイエンのニーズは間違いなくある。BMWはX5をベースにしたX6をリリースし、メルセデス・ベンツはGLEとGLEクーペをラインナップ。アウディにはQ7とQ8があるし、レンジローバーにもスポーツがある。ライバルを見れば、そのマーケットのが小さくないことも明らか。
カイエン・クーペが実用性をどの程度犠牲にしたかは別として、ポルシェには優れたデザインと技術に支えられた、スポーツカーという血筋がある。アピアランスの変化に伴う、クーペとしての実質的な中身を獲得しているのだろうか。簡単なタスクではない。
好みの分かれるところだが、まずはエクステリアデザインから見ていこう。上下に低くなったシルエットや、ボディ後半で傾斜したルーフラインが最もわかりやすい変化。傾斜の強められたフロントガラスや、若干筋肉質になったフェンダーのラインは、ポルシェ911とのつながりを感じさせなくもない。一回り大きくなったマカン風でもある。
リア周りは、テールゲートに内蔵された104km/h前後で立ち上がるリアスポイラーが付いていたとしても、好みは分かれるだろう。それでもBMWやメルセデス・ベンツよりは良いと思う。
大型SUVでは最も運転を楽しめる1台
インテリアは、標準のカイエンと変わらない上質で完璧なデザインと仕立てが施されている。定員は4名が標準で、アームレストと小物入れ、カップホルダーが一体になったコンソールでリアシートは左右が分断されている。3名がけのベンチシートは無料オプション。
シートの着座位置を30mm低くすることで20mm低くなったルーフラインに対応し、後部座席にも大人が座れる。ラゲッジスペースは16%狭くなっており、まだ充分な大きさはあるとはいえ、愛犬にとっては望ましい変化ではないだろう。
「PASM」と呼ばれるアダプティブダンパーは標準装備となったほか、今回の試乗車には1600ポンド(21万円)の3チャンバー式エアサスペンションも装備されていた。カイエン・クーペは通常のカイエンと変わらない、高速域での滑らかな乗り心地と落ち着きを備えている。大型SUVの中では、最も運転の楽しめるクルマのひとつだ。
ステアリングの操作感もナーバスすぎず、重み付けも自然。見かけ以上にカイエンを機敏に操れる。ボディの姿勢制御も引き締まっており、進路変更も軽快。多くの大型SUVよりも、コーナーへの進入時に減速を迫られることがない。
ポルシェの技術力を持ってしても物理の法則に逆らうことは難しいが、走行性能はとても優れている。標準のカイエンよりも車重は45kg増えているが、知覚することも殆どない。だが、カイエンよりも優れているとは断言しにくい。