レス・イズ・モアは通じない ポルシェ・カイエン・クーペ エントリーモデルに試乗
公開 : 2019.10.07 09:50 更新 : 2019.10.08 11:12
ポルシェらしくない部分もちらほら
まずは乗り心地。試乗車には2500ポンド(33万円)模するオプションの22インチホイールを履いていたことが理由と思われる。高速域ではエアサスペンションの助けもあって、ラグジュアリーSUVらしい静かで落ち着いた走りを味わわせてくれる。
一方で市街地や低速を強いられるタイトなコーナーでは、想像以上に頭が揺さぶられる振動が伝わってくる。ロードノイズも、路面状態によってはうるさい。恐らくホイールをインチダウンすれば、これらは解決できるだろう。もうひとつは、クーペの本質的な不満を良くするにはSモデルへアップグレードが必要だから。
6万2129ポンド(826万円)のエントリーグレードには、6000ポンド(79万円)安い標準のカイエンと同じ3.0LのV6ターボが搭載されている。最高出力は334psもあり、かなり力強い。カタログスペックでは0-100km/h加速は6.0秒と、大きく重いSUVとしては良好といえる数字だ。
だがポルシェというエンブレムを掲げたクルマとして、背中を押されるような心地よい加速感と、個性的なサウンドを期待するはず。それがクーペには備わっていないのだ。
大きなボディのガソリンエンジン車だから、燃費は様々な走行条件を平均しても8.8km/L程度に留まる。結果としてディーゼルエンジンの魅力が増して見えるはず。エンジンノイズも目立たず、同程度に速くより安楽で、燃費も3.5km/L程は良好だ。
レス・イズ・モアは通じないカイエン・クーペ
予算6万ポンド(798万円)程度で大型SUVのクーペボディを探すと、エントリーグレードのカイエンクーペより良いモデルは見つからないはず。カイエンらしさはそのままに、スタイリッシュさも増しているし、長距離クルーザーとしての完成度も高い。
もしこのクルマがBMWやメルセデス・ベンツなら、きっと満足できるものになるだろう。だが、ポルシェというブランドのクルマである以上、相応のパワートレインの味わいを期待するのではないだろうか。この3.0L V6ターボが、ブランドを正当化するものとは思えないのだ。
リアトレッドが18mm広げられているものの、標準のクーペが特にスポーティに仕立てたわけではない。貯金をして、間もなく登場するカイエン・クーペSか、とてつもなく速いカイエン・クーペ・ターボを選びたくなってしまう。エントリーグレードのカイエン・クーペと比較しても、実際の環境での燃費でも大きな差はないだろう。
ポルシェでも、カイエン・クーペには、レス・イズ・モア(少ないことは良いこと)が適用されないのだった。
ポルシェ・カイエン・クーペのスペック
価格:6万2129ポンド(826万円)
全長:4931mm
全幅:1983mm
全高:1676mm
最高速度:241km/h
0-100km/h加速:6.0秒
燃費:10.7km/L
CO2排出量:212g/km
乾燥重量:2105kg
パワートレイン:V型6気筒2995ccターボ
使用燃料:ガソリン
最高出力:334ps/6300rpm
最大トルク:45.8kg-m/1340rpm
ギアボックス:8速オートマティック