リチウムイオンバッテリー 製造過程を実際に体験 基本構造は市販EV同等
公開 : 2019.10.12 05:50
レイヤーを組み合わせてセルを構成
4.カレンダリング
この工程はアノードに用いられるグラファイトのコーティングを少しだけ壊すことにより、その密度を高め蓄電能力を工場させるものだ。このプロセスは繊維産業の仕上げに使われていた技術を応用している。
5.ドライルーム
リチウムは空気中で水分に触れると化学反応を起こし、セルのパフォーマンスが低下する。そのため最後のプロセスは相対湿度0.5%のドライルームで行われる。ここで働く従業員は、頻繁に水分補給を行う必要がある。
6.レイヤーの型抜き
グラファイトでコーティングされた銅のリボンがA7サイズにカットされ、レイヤーが作られる。3.5Vおよび6Ahのパフォーマンスを実現するため、われわれのセルには7のアノードと8のカソードで構成される15のレイヤーが用いられた。それぞれが型抜き機で正確にカットされ、セパレーターとインシュレーターの間に配置される。これが不正確だと、ショートや発火につながるのだ。
7.セルの組み立て
アノードの各レイヤーはセパレーターとカソードの各シートに閉じ込められる。面倒な工程だが、機械によって自動的に処理される。われわれのセルは15のレイヤーの間におよそ1mのセパレーターを使っている。
8.集電装置の溶接
超音波溶接によりアノードのレイヤーを確実に接着し、電子がセルから出入りできるようにする。
セルの整形および仕上げ
9.セルのパッキング
アノードのレイヤーがアルミ被覆ポリマーのパウチに封入される。これはコーヒー豆などのパッケージに用いられるものよりもさらに強固だ。このセル内部では15年間にわたり密封状態が保たれるが、コーヒー豆の包装ではせいぜい6か月だろう。パウチの縁はヒートシールされる。
10.電解液の追加
わずか2mlの電解液リチウム・ヘキサフルオロリン酸塩(LiPF6)がセル内に注入される。反応性が高く可燃性を持つリチウムからは水分が徹底的に排除される。われわれのA7セルの重量はおよそ200gだが、そのうちわずか4%がリチウムだ。
11.整形および熟成
これがセルを機能させるために必要な最後の工程だ。専用装置がセルの充電および放電を繰り返し、その様子を観察される。電解液とアノードの最初の反応により、このセルが有効になる。ここでガスが発生するため、以前のプロセスでパウチを大きめにしてあるが、これは後ほど切り取られる。
驚くべきことに、このセルの完成には数日を要する。テスラに使われる小型セルですら3から4日かかるが、より大きなパウチでは28日もかかるのだ。われわれのA7はおそらく2〜3日で済むだろう。