旨味の濃いSUV 新型 ランドローバー・ディスカバリー・スポーツに試乗
公開 : 2019.10.09 09:50 更新 : 2019.10.09 22:11
感心するほど滑らかで上品なディーゼル
中回転域で力強さを感じ取ることはできるが、重量級のSUVの加速は穏やか。郊外の道で遅い車を追い越すには充分とはいえ、見通しの良い長めの直線と加速の我慢は必要となる。ディーゼルエンジンのトップグレードだが、クイックとは呼べないクルマだ。
4輪駆動のファミリーカーとして捉えれば、ライバルモデルよりも航続距離では有利。直線加速が劣っていてもすべてを否定することにはならない。それでも目一杯の加速時に、ATの変速が優柔不断気味に感じられたことは残念でもある。
スロットルレスポンス自体は悪くないのだが、ペダルを踏み込んだ際にキックダウンで変速するべき段数を思案するのか、しばらくの空白があるのだ。レブカウンターを見ていると、加速していないのにエンジンの回転数だけ高くなっていることがわかる。変速が終了する頃にはエンジンは大きくうなり、やや息切れ感すら生じてしまう。
一方でリラックスしたペースで走行している限り、感銘を受けるほどスムーズで上品なエンジンでもある。防音性も高く、車内にいる限りエンジン音もほとんど聞き取れない。高速道路を走行中はそれなりにノイズも耳に届くし、ドアミラーの風切り音も発生するが、軽微なレベルに留まる。
ボディの姿勢制御も良好。スポーティということはないが、どっしりとした安定感がある。カーブの連続する区間で、サルーンと同じような振る舞いをディスカバリー・スポーツに期待できない点では変わらないが、低速域でのステアリングの正確性では優れている。
旨味の詰まったファミリーSUV
しっかり制御の効いたボディロールと、フロントタイヤの優れたグリップ力が、少し攻め込んだ走りをしてもアンダーステアを抑え込んでくれる。操縦性としては充分に素直で楽しさのあるものだといえる。
試乗車の21インチホイールはオプションで、路面のコブや轍の振動を処理しきれない様子だったが、基本的に運転している時間の殆どは快適。全体的に角の取れた柔らかい乗り心地で、うねりのある路面を通過しても車内空間は落ち着きを保っていた。
新しいディスカバリー・スポーツの価格は3万1575ポンド(420万円)から。トップグレードは4万9675ポンド(660万円)となる。試乗車のRダイナミックS D240の価格は4万3975ポンド(584万円)となる。
パワーで劣る4気筒ディーゼルを搭載したBMW X3 xドライブ20d Mスポーツの4万4015ポンド(585万円)と比較するとコストパフォーマンスで優れているといえる。ただし、オプションを選んでいくと簡単に5万ポンド(665万円)は越えてしまうだろう。
ディスカバリー・スポーツは、ライバルのBMW X3ほどのダイナミクス性能は備わっていない。4気筒ディーゼルも同レベルの洗練性を獲得していない。だがファミリーSUVとして見た場合、より実直で使いやすいクルマではある。
7名の定員も設定でき、ライバルよりもオフロード走行はお手の物。多くの人にとって旨味の濃いクルマだといえるだろう。
ランドローバー・ディスカバリー・スポーツ RダイナミックS D240 AWDのスペック
価格:4万3975ポンド(584万円)
全長:4597mm
全幅:1920mm
全高:1727mm
最高速度:218km/h
0-100km/h加速:7.7秒
燃費:14.0km/L(WLTP複合)
CO2排出量:187g/km
乾燥重量:1934g
パワートレイン:直列4気筒1999ccターボ
使用燃料:軽油
最高出力:240ps/4000rpm
最大トルク:50.9kg-m/1500−3000rpm
ギアボックス:9速オートマティック