メルセデス・ベンツ500E(W124) 後編 試乗、最新EV「EQC」と意外な共通点
公開 : 2019.10.13 05:50 更新 : 2021.10.09 22:46
「炎と絹」に集まる熱視線
デビュー当時、ドイツ人が500Eにつけたキャッチコピーは「Feuer und Seide」(ファイヤー&シルク)。
これを上手く訳した日本語版のカタログには「炎の情熱と絹の優美」と記されていた。
圧倒的な動力性能が「炎」だとすれば、静かに街中を流して走る時の500Eの立ち振る舞いは、まさに「絹」の如しである。
W124は500Eじゃなくても、そのボディが異常なくらいに硬い。ところが500Eはそこにどっしりと根を下ろしたような座りの良さ(操作系の重々しさとも言う)が加わることで、その他大勢とはまるで違う巌のような世界観をかたち作っている。
500Eだけはリアにワゴンモデル由来の液体とガスによるレベライザーが付いており、これがV8ゆえのノーズヘビー感を取り除き、500Eの絹のような乗り心地の完成に役立っていると思われる。
30年近く前に作られた走行27万kmの500Eをドライブしていると、21世紀の自動車の進化とは果たして何だったのか?と思わずにはいられない。
現代のクルマはどれも、機械的、物質的なレベルで500Eを越えないまま、ESCとかACCとかEPSとかPHVとか、アルファベット3文字系のギミックを付け足すことに心血を注ぎ新しさを創出してきた。
けれど時代を越えてクルマ好きを「すんげぇ、コレ!」と唸らせる本質がそこにあるだろうか?
だから500Eは走行距離にも価格にも全く左右されず、多くのファナティックたちから支持され続けているのである。