フィアット500L MPW

公開 : 2013.07.11 16:13　　更新 : 2017.05.29 18:51

■どんなクルマ？

フィアットのサブブランド、500をベースとした500L MPW(ヨーロッパ名：500Lリビング)だ。500Lよりも205mm長い全長を持ち、パッセンジャー・シートを5席から7席に増やすオプションを持ったモデルである。しかし、4352mmという全長や、300万円のフォード・グランドCマックスよりも168mm、305万円のルノー・グランドセニックよりも221mm、295万円のシトロエンC4グランド・ピカソよりも238mm短い。サイズ的にライバルとなるのは、230万円のシトロエン・ベルランゴ・マルチスペース1.6 HDi 90VTRだろう。

MPWは、500Lに対して£800(12万円)高く、更に7シーターのオプションをつけると£700(10.5万円)高くなる。従って、7シーター・モデルは9月に英国で販売される際には£18,000(270万円)という価格となるだろう。

トリムは2タイプ。ポップスターとラウンジだ。また、500Lには用意されていたベーシックなナチュラル・アスピレーションの1.4ℓガソリン・エンジンは用意されていない。104bhpの0.9ℓツインエア・ガソリンと、84bhpの1.3ℓおよび104bhpの1.6ℓのマルチジェット・ディーゼルが発表時にラインナップされ、118bhpの1.4ℓのガソリン・ターボと、同じく118bhpの1.6ℓのマルチジェット・ディーゼルは今年の最後に追加される予定となっている。

1.3ℓディーゼルは5速マニュアル、それ以外のモデルは6速マニュアルで、オプションとしてオートメーテドされたデュラロジック・マニュアルが装着される。

ミラノでの試乗会でわれわれのために用意されたのは、ラウンジ・トリムの104bhpを発揮する1.6ℓディーゼルであった。

■どんな感じ？

その背後に余分なメタル・ボディを抱えるにもかかわらず、500Lのどっしりとしたスタイルは引き継がれているし、500の可愛らしいスタイルもどことなく感じられる。

そのシート・ポジションは見晴らしがよいもので、目の前の視界も良い。シートは柔らかいがサポートに優れており、高さ調整も可能。インテリアには固いプラスティックが見受けられるが、ラウンジ・トリムで採用されている”エコ・レザー”のフェイシアと上手くマッチングしている。

予想どおり柔軟性のあるシート・レイアウトで、セカンド・シートは60:40のスピリットの他、折りたたんで前方に移動することも可能。また、フロントのパッセンジャー・シートも最高2600mmの長尺物を収めるために折りたためる。更に、サード・シートは、平らなブート・スペースを造り出すために、フロアと同一面に収めることができる。フロント中央のコンソールはなくなってしまったが、その代わりにフロント・シート後方にピクニック・テーブルが取り付けられている。

サード・シートに誰も座らない状態であれば、セカンド・シートは充分なヘッドルームとレッグルームを持つ。しかし、ショルダー・スペースは少々小さい。実際には、サード・シートは子供のためを割りきらなくてはならないだろう。ただし、サード・シートに子供が座ってしまうと、セカンドシートは身長180cmの人間は膝を広げないと座れない。それでも、荷室スペースは168ℓとベルランゴよりも100ℓも大きい。また、シートを倒せば最高1708ℓのブートスペースが出現するのだ。

1.6ℓ4気筒エンジンは、2000rpm以下になるのを嫌う傾向がある。2000rpmから4000rpmが”美味しい”エリアだ。加速中はこのディーゼル・ユニットは少々やかましいが、クルージングになれば静かなもの。ただし、重たくなったボディには少々トルク不足は否めないのも事実だ。ギアボックスは円滑で、うまくエンジンに迎合しているといえるだろう。

フロント・マクファーソン・ストラット、リア・トーション・ビームというレイアウトのサスペンションは、ラフな路面で不安定になってしまっていたものが修正された。ボディ・コントロールも適切になり、悪路ではタイヤが不満をいうものの、通常の路面での乗り心地も改善されている。

また、電動パワー・ステアリングはダイレクトで、タウンスピードでは充分に軽く歓迎されるべきものだった。

■「買い」か？

フィアット500L MPWは、多くのスペースと7シーターが必要な層にアピールするモデルだ。確かにディーゼルのサウンドは大きいが、それでも改良され、ダイナミズムも予想以上に改善されている。価格的にはシトロエン・ベルランゴには勝てないが、フィアット・ブランドとその豪華な装備は、その価格差を覆すに充分のものがあると思われる。

(リチャード・ウェーバー)