BMW史上最速の量産モデル 新型 BMW M8クーペに試乗 究極のGTといえるのか?
公開 : 2019.10.12 09:50 更新 : 2019.10.31 10:07
マッスルカーのように大胆なMダイナミック
ブレーキとタイヤの性能を測るようなタイトコーナーでも、コンパクトで軽量なスポーツカーほどではないにしろ、乱れず確実に向きを変えていく。4輪駆動状態では近年の大型Mモデルと同様に、質量と速度とのコントロールは素晴らしいの一言。
Mダイナミック・モードは、後輪駆動となりセーフティネットがオフになる設定。ドイツ製大型クーペは、アメリカン・マッスルカーのような性格を見せる。1960年代のマッスルカーほどじゃじゃ馬ではないが、ドライバーの理性を解き放てば、M8はタイヤはスキール音を上げ、スモークを立ち上げ、あっという間にすり減る。
後ろのタイヤだけに送り込まれるふんだんなトルクによって、手に負えない自体に陥る可能性もある。だが少なくともある程度までは、抑え込まれたボディロールと極めて正確なステアリングフィールによって、予測可能な挙動の中に留まっていられる。
0-100km/hを3.2秒でこなすが、数字ほど荒々しさは感じられない。このスピードでコーナリングできるライバルは少ないが、タイヤがグリップ力を失った際の振動は殆ど伝わってこない。この感触は、ウェットコンディションのサーキットならさらに難しく感じさせるかもしれない。
バイワイヤで機能するブレーキは強烈な制動力を発揮するが、過去に体験した最高のブレーキほど、ロック直前の感触は優れていない。カーボンセラミック・ディスクはオプションとなる。
英国の道が難敵となり得るサスペンション
シャシーエンジニアのスベン・エシュが約束した通り、軽くないM8はとてつもなく速いが、驚くほどに運転が難しくない。限界領域に達するとテールは上品さを持ってスライドを始めるが、コントロールはしやすい。4輪駆動モードの場合なら、フロントタイヤがテールスライドから引っ張り出す感覚を得られるはず。
反面、一般道で感じるM8は、それほど上質に整えられたものではないだろう。アルガルヴェ・サーキットは滑らかな路面が続くが、時折大きな振動を突然感じることはあった。小さな起伏や舗装の継ぎ目、波打ちなど、すべての凹凸でサスペンションは充分に処理しきれず、垂直方向の振動を車内に伝える。その後の収束は素早いけれど。
英国のような状態の悪い舗装が続く道では、選択したドライビングモードに関係なく、M8のサスペンションにとっては難敵となりそうだ。乗り心地の快適性だけでなく、高性能なクルマを楽しめる世界を限定してしまうという意味でも少し心配ではある。
オーナーなら、エンジンやサスペンションなどの設定の組み合わせを、好みで選択することはできる。自身好みのM8の設定をM1かM2のボタンに登録しておけば、ずっと穏やかなクルマとして扱うことができるだろう。
気張らずに走らせている限り、豪奢なインテリアを思う存分楽しむこともできる。キルティング加工が施されたレザーが贅沢に用いられ、スタイリッシュなダッシュボードには、21世紀を象徴するデジタル機能も不足はない。