稀代な3台のロータリー マツダ・コスモ、NSU Ro80、シトロエン・ビロトール 前編
公開 : 2019.10.19 16:50 更新 : 2021.03.05 21:43
一番高級感の漂うNSU Ro80
NSU Ro80を運転しながら、シトロエンGSビロトールを追いかける。NSUに負けないペースで、ハイドロサスに浮遊するGSビロトールは走る。路面とは隔離されたしなやかな乗り心地はGS自体の素晴らしい特徴。GSビロトールは、ロータリーエンジンとハイドロ・ニューマチックという珍しい技術を組み合わせた唯一の量産車ということになる。
ブレイクが所有するNSU Ro80は1969年製。ドイツ在住に在住していた新しもの好きの英国軍員に購入されたクルマで、1973年に英国にやってきた。オーナーは2002年に亡くなるまで大切にしていたという。
わたしはRo80は美しいクルマだと思うが、実用的でピシッとしたインテリアの雰囲気とは、エクステリアが対照的。ダッシュボードはシンプルで、足元も広々した車内は心地よく、トランスミッションの出っ張りも殆どない。
走り出すと、この3台の中では一番静かで高級感がある。走行性能も悪くないが、一般的な当時のドイツ車とは一線を画す個性が宿る。ボディロールは外で見たほど大きくは感じられなかった。フックス製のアルミホイールを履き、乗り心地やグリップ力、制動力もすべてが良好だ。
サスペンション・ストロークも十分あり、路面のコブも物ともしない。ブレーキも強力でシトロエンよりも扱いやすい。NSU Ro80はカーブの連続する区間でも楽しく運転できるが、乗り心地やスタビリティの高さから、高速道路を長時間走行するようなスタイルがよく似合う。
丸目4灯のヘッドライトに4脚のビニルレザー・シート。エンジンにはスパークプラグが4本つくこのRo80は初期型。走行距離は12万2300kmで、欧州各地のNSUのミーティングへ自走し、これまでに1万6000km程を走行したという。
NSU Ro80の良さを広く伝えたいという思い
ブレイクはこのロータリーエンジンを積んだ「信頼性の低い」クルマをコレクションしていることに誇りを持っている。クルマの欠点を受け入れつつ、1960年代の偉大なクルマ、Ro80の良さを多くの人に知ってもらおうと活動している。
所有する沢山のNSU Ro80のうち、2台が外出用で2台はスペア。残りのクルマもレストア前提で保管してある。彼へうまく気持ちを伝えることができれば、そのうちの1台を譲ってくれたり、復元も手伝ってくれるかもしれない。
だが、マツダ・コスモ110Sと、シトロエンGSビロトールは、ブレイクが手放すとは思えない。売却意思の質問すらしなかった。