ボルボ最速の加速力 ボルボS60 T8ツインエンジンに試乗 PHEV 303ps+87ps
公開 : 2019.10.17 09:50
ダイナミクス性能と快適性とのバランス
充分に速く感じられる加速力だが、ドライバーが必要と感じた時に、常に満足できる加速力が得られるわけでもないのだ。ハイブリッドモードで走っていて急にアクセルを踏んでも、環境に優しいシステムが積極的な設定を目覚めさせるまでに、数秒のタメがある。
しかも4気筒エンジンは、回転数が高まっても比較的手前でシフトアップしてしまい、工業的なエンジンノイズが車内に響いてくる。T8としては従来と変わらない振る舞いではある。とはいえS60の場合、目覚めたパワーをしっかり扱いきれるシャシー性能を得ていることが特徴だ。
ボルボによればS60のサスペンション設定は、兄弟モデルのV60とは異なるとのこと。高まるSUV人気の中で、4ドアサルーンを購入する層はいわゆる走ることが好きなドライバー、という傾向があるためだという。
素晴らしいことに、スポーティな設定を得たシャシーは、ダイナミクス性能と快適性とがほどよくバランスしている。柔らかさとの引き換えに落ち着きが備わり、操縦する自信の湧く正確な身のこなしを獲得。
ステアリングも他のボルボ製モデルよりクイックで、手応えも優れている。クルージング時では穏やかにステアリングを握っていられる、クリーンなフィーリングも備えている。
サスペンションは衝撃吸収性に優れており、路面との設置感も従来よりは高く、19インチホイールでも不都合は感じられなかった。パフォーマンス・サルーンとしての資質を高めつつ、S60を日常的に利用することに悪影響を与えていない。
ただし、操舵感には常に人工的なところがある。コーナリングバランスは自然で落ち着いているが、楽しさに溢れているわけでもない。
PHEVとしての実力に疑問はない
ボルボS60 T8ツインエンジンは、BMWやメルセデスAMGと正面勝負をするつもりはないはず。スパイスが効いているが、足まわりは柔らかい方だし、ハイブリッドシステムの重量も軽くない。ポールスター社によるオーリンズ製ダンパーも間もなく選べるようになるらしいから、期待したいところではある。
いまのところS60は速く、快適で完成度も高いが、従来的な評価でのパフォーマンス・サルーンやドライバーズカーとは呼びにくい。パワートレインも興奮を誘う走りのためというより、実用性の高さや効率性に振った設定だ。
だが職場や自宅で充電が可能な人にとって、実力の高さに疑問はない。ガソリンエンジン以上にスムーズな走りと優れた燃費を持ちつつ、いざとなれば相当な運動神経も備えている。完璧に仕上げられた北欧らしい落ち着きを持つ車内には、大人4名が快適に過ごせる空間が用意されている。
エクステリアデザインもライバルよりカッコ良いと、わたしは感じている。同等のハイブリッド・システムを備えるライバルモデルと比較すれば、明確にS60の強みが見えてくるだろう。そうせずとも、少なくとも第一印象は上々だ。
ボルボS60 T8ツインエンジンのスペック
価格:4万9805ポンド(662万円)
全長:4761mm
全幅:1850mm
全高:1437mm
最高速度:249km/h
0-100km/h加速:4.6秒
燃費:43.4−62.4km/L(WLTP)
CO2排出量:39g/km(WLTP)
乾燥重量:1960kg
パワートレイン:直列4気筒1950ccターボチャージャー+スーパーチャージャー+電気モーター
使用燃料:ガソリン
最高出力:303ps(ガソリンエンジン)+87ps(電気モーター)
最大トルク:40.7kg-m/1800−4800rpm
ギアボックス:8速オートマティック