新型ベントレー・フライングスパー 日本人ジャーナリストの評価 大谷達也が海外試乗

公開 : 2019.10.16 08:01  更新 : 2021.10.13 15:26

ベントレー新型フライングスパーに、大谷達也が海外で試乗しました。従来モデルと新型の違いをおさらいし、モンテカルロの狭い市街地とワインディングを試乗。どこまでも正確に反応する延長に走りの楽しみがあるようです。

「ボク」から「わたし」へ(胸を張って)

text:Tatsuya Otani(大谷達也)

ベントレーの真骨頂といえばグランドツアラーであり、現行ラインナップのなかでいえば2ドア・クーペのコンチネンタルGTにトドメを刺す。

これをベースに4ドア・セダンに仕立てなおしたフライングスパーは、コンチネンタルGT譲りの力強さとサルーンらしい居住性を併せ持つ佳作だが、これまではどうしてもコンチネンタルGTの影に隠れがちだった。

ベントレー・フライングスパーは、3代目になってコンチネンタルGTの存在さえかすみかねない強烈な個性を手に入れたと筆者。
ベントレー・フライングスパーは、3代目になってコンチネンタルGTの存在さえかすみかねない強烈な個性を手に入れたと筆者。

それが、3代目になってコンチネンタルGTの存在さえかすみかねない強烈な個性を手に入れたのである。

試乗会に帯同したシャシー・エンジニアのリチャード・ヘイコックスは新型フライングスパーの位置づけをこんな風に説明してくれた。

「これまでは(肩をすくめながら小声で)『ボク、フライングスパーです』というイメージだったけれど、新型は(堂々と胸を張って)『わたしがフライングスパーだ』と主張している感じ。わたしたちはそんな意識で新型を開発しました」

技術者たちの意識変革は、ステファン・ジラフ率いるデザイナー陣の仕事振りにも大きな影響を及ぼした。

その変化については後ほど詳しく紹介するが、これまでよりも堂々とした佇まいで、ベントレーらしい上品さを失わない範囲できらびやかさも身につけている。

3代目フライングスパーはいかに生まれ変わったのか? まずはそのハードウェアを紹介しよう。

フライングスパー 目に見えぬ場所の変化

ボディはアウターパネルだけでなく構造体にもアルミニウムを全面的に採用。このため、新型は全長が40mmほど延長されたにもかかわらず、車重は充実した装備を含めても38kg軽量に仕上がったという。

それ以上に重要なのが前輪の位置で、旧型に対して130mmも前方に移動。この結果、エンジンがほぼホイールベース内に収まるフロント・ミッドシップレイアウトになり、運動性能の抜本的な向上が期待できるようになった。

新型フライングスパーの前輪の位置は、旧型に対して130mmも前方に移動した。
新型フライングスパーの前輪の位置は、旧型に対して130mmも前方に移動した。

エンジンは引き続き6.0L W12ツインターボを搭載するものの、内部の熟成をはかって性能向上を図ると同時に省燃費化も実現。気筒休止機構により熱効率は15%も向上したという。

さらにギアボックスは8速トルコン式から8速デュアルクラッチへと換装。フルタイム4WDの前後トルク配分機構は従来のトルセン式から油圧多版クラッチを用いた電子制御可変式に改めることでスポーティな走りを得た。

足回りでは空気容量が大きな3チャンバー・エアサスペンションを採用するとともに、48Vシステムを用いたアクティブ・アンチロールバー機構を用意。

ここまでは基本的に新型コンチネンタルGTと同じ内容ながら、フライングスパーでは4WS機構をベントレーとして初採用し、小回り性と高速域でのスタビリティ改善を図っている。

しかし、そうしたハードウェアの変更以上にフライングスパーの個性を際立たせているのが、そのデザインである。

記事に関わった人々

  • 大谷達也

    Tatsuya Otani

    1961年生まれ。大学で工学を学んだのち、順調に電機メーカーの研究所に勤務するも、明確に説明できない理由により、某月刊自動車雑誌の編集部員へと転身。そこで20年を過ごした後、またもや明確に説明できない理由により退職し、フリーランスとなる。それから早10数年、いまも路頭に迷わずに済んでいるのは、慈悲深い関係者の皆さまの思し召しであると感謝の毎日を過ごしている。

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