新型ベントレー・フライングスパー 日本人ジャーナリストの評価 大谷達也が海外試乗
公開 : 2019.10.16 08:01 更新 : 2021.10.13 15:26
内装/外装を細かく観察すると……
フロングリルは3代目コンチネンタルGT同様、よりワイドな形状に置き換えられたが、フライングスパーではコンチネンタルGTより4-5cmほど背が高い。また
コンチネンタルGTとは違ってヘッドライトを垂直近くまで起き上がらせることによりモダンな雰囲気のなかにも堂々とした威厳を表現。
また、ボディサイドにパワーラインとホーンチラインという2本のキャラクターラインを設けている点は従来と同じながら、リアフェンダー付近のホーンチラインを水平的で一直線に近い形状に改めることで、ボディ全体の伸びやかさやスピード感を強調している。
さらに華麗に生まれ変わったのがインテリアで、キャビンの中央部に設けられたエアコンの吹き出し口はお馴染みのブルズアイからBの文字をかたどった四角形に近いものに変更。
さらにこの金属部分はオプションでダイヤモンドナーリングなどの凝った加工を施すことが可能で、これによりキャビンの雰囲気がより華やかになった。
レザー系ではシートにカセドラル・ウィンドウと呼ばれる新しいステッチが用意されるほか、ドアの内張などには深い凹凸を刻み込むことで光の陰影が美しく浮き上がる3Dレザーをオプションで設定。
気品がありながら現代的な世界に生まれ変わった。
市街地 コンチネンタルGTと比べると
3代目フライングスパーの運転席に収まって、国際試乗会が開かれたモンテカルロの狭い市街地を走り始める。
最初は車幅感覚が掴みにくかったが、小さくUターンするような道も含めて切り返しが必要になる場面は結果的に一度もなかった。4WSのおかげだろう。
市街を抜けて高速道路に入る。車速を上げてもエンジンノイズが聞こえないのはもちろん、ロードノイズもほとんど気にならない静けさ。
しかも、コンチネンタルGTと違って路面からのゴツゴツとした振動がほとんど伝わってこない。
前出のヘイコックスによれば、ブッシュをコンチネンタルGTより柔らかくしたほか、サスペンションストロークが長いことが乗り心地にプラスに作用しているそうだ。
正確な反応 ファン・トゥ・ドライブに
ワインディングロードでも新型フライングスパーは期待を裏切らなかった。
速度域にかかわらずターンインでシャープにノーズの向きが変わるうえ、脱出ではフルタイム4WDのメリットを生かして鋭く加速していく。
しかも、どれほどプッシュしてもハンドリング特性が変化せず、思いのままにコーナリングできるのだ。
こう聞くとフールプルーフで退屈なクルマと思われるかもしれないが、ここまで正確に反応してくれるとむしろそれ自体がファン・トゥ・ドライブに思えてくるから不思議だ。
試乗コースはタイトなブラインドコーナーの連続で、タイヤの性能を見極めるのは難しい状況だが、それにしてもかなり攻めたつもりでもハンドリング特性の変化が見られたのは下りの中速コーナーにオーバースピード気味で進入したときに軽いアンダーステアが顔を出しただけだったのには驚いた。
サルーンの乗り心地とスポーツカーのハンドリング。ここに魅惑的な内外装のデザインが加わるのだから、いままでのようにコンチネンタルGTの影に隠れるだけでなく、十分に主役を張れる存在感を手に入れたことは間違いないだろう。