再確認される価値 ベントレー・コーニッシュ 職人の徹底的なお仕事 後編

公開 : 2019.10.26 16:50  更新 : 2020.12.08 10:56

美しいと感じるほどズムーズな走り

塗装が終わったボディが戻ってくると、クルマの組み直しが始まる。美しいカーペットが敷かれ、新しいウッドパネルに天張り、貼り直されたシートが取り付けられた。すべての開閉部分は組み直され、ギャップや開閉時のタッチが調整し直されている。

「組み上がった後のテスト走行時に、すべてのキシミ音を確認して調整しました。ドアの位置を微調整し、風切り音を消すために多くの時間を要しました。窓のフレームも、開閉時に違和感がないように整えています」

ベントレー・コーニッシュFHC
ベントレー・コーニッシュFHC

クリス・チェンバーズが真新しく再生されたベントレー・コーニッシュと再開する。初走行で生じた不具合は、ドライブトレインからの僅かな振動。シルバースピリット・タイプCVの部品を用いて対策したという。

このクルマを運転してみると、コーニッシュが新車だった時の姿が思い浮かぶ。ルーフラインは低いが居心地は良く、4名の大人がゆったり座れるシートが付いている。ドライビングポジションは前のめり。

鮮やかな赤いレザーは柔らかく、ほのかに香る。ディテールも素晴らしく、エアコンもとてもよく効く。だが、ダッシュボードは初期型の方が筆者は好きだ。

路上での存在感は大きいが、ボディ幅は適度に狭く、どんな道でも運転はしやすい。クルマはシルキーに進み、風切り音もない車内は外界との不気味な隔離感がある。V8エンジンからかすかにハミングが聞こえるが、スムーズなスロットルレスポンスは美しいと表現したくなる。豊かだが荒々しさのない力感で、コーニッシュを走らせる。

これまで運転した中で最上の仕上がり

やや小ぶりなレザー巻きのステアリングホイールは操舵時の印象も良い。クルマの雰囲気に似合う、適度な軽さを備えている。クルマを狙った通りの場所へと進めていける。フィードバックはないが、特に必要もなさそうだ。

ふっくらと滑りやすいシートは、コーニッシュのコーナリングスピードに制限を与える。ハーベイ・ベイリー社製のアンチロールバーとダンパーが、アンダーステアを抑え込み、高速コーナーを線を引くようにスムーズに走らせられる。だがフィーリングは重厚でラグジュアリー。

ベントレー・コーニッシュFHC
ベントレー・コーニッシュFHC

筆者もこの質感が好きだし、オーナーも同様だろう。「アストン マーティンを含む何台かのクラシックカーを所有しています。すべて専門家に修復してもらい、コンクールに出品できる状態です。他のクルマも、このコーニッシュと同等のコンディションです」 とオーナーのクリスが話す。

このベントレーは、ヒラー・ヒル社にとって初めての新車同様に仕上げたコーニッシュではない。だが、最高の結果につながる仕事を引き受けることだけが、同社の姿ではないという。「オーナーの望む方法で、クルマを直したいと考えています」

このコーニッシュの水準まで仕上げる仕事は、素晴らしい偉業と呼べるものだ。このクルマより優れた状態のコーニッシュだけでなく、ほかのロールス・ロイスやベントレーすら、運転したことがないと感じるほどだった。

ベントレー・コーニッシュFHC(1971年〜1976年)のスペック

価格:新車時 3万3000ポンド(438万円)/現在 10万ポンド(1330万円)以上
生産台数:27台(右ハンドル)/16台(左ハンドル)
全長:5169mm
全幅:1829mm
全高:1473mm
最高速度:193km/h
0-96km/h加速:9.6秒
燃費:3.8-5.3km/L
CO2排出量:−
乾燥重量:2177kg
パワートレイン:V型8気筒6750cc
使用燃料:ガソリン
最高出力:−
最大トルク:−
ギアボックス:3速オートマティック

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