マツダ・ロードスターに触発された2台 Z3 MロードスターとCLK32 AMG 前編
公開 : 2019.10.27 07:50 更新 : 2020.12.08 10:56
クラシックなZ3 MとモダンなCLK AMG
さて、BMW Z3 Mロードスターは、通常のZ3と同様にアメリカの工場で製造された。ショールームに姿を見せたのはSLK AMGよりも3年早い1998年。
スタイリングはロングノーズ・ショートデッキのややクラシックなもの。大きく膨らんだ前後のフェンダーが、FRであることを強調する。なだらかに弧を描くボンネットは、1930年代のBMW 327や328ロードスターのイメージともかぶる。低いウェストラインとフェンダー後ろのエアベントは、1950年代の507のようだ。
一方でメルセデス・ベンツで歴史を感じさせるところといえば、SLKの名前くらい。「Sport Leicht Kurz(スポーツ・ライト・ショート)」という意味の頭文字。SLKの上位モデルとしてSLが存在することを受けたもの。1928年から1932年にかけてスーパーチャージャーを搭載したSSKというクルマも存在していた。
SLKのコンセプトモデルが発表されたのは1994年で、既に25年も前のクルマだが、今見ても新鮮で古びた印象はない。ボディはZ3のように肉体改造されたわけでもなく、エレガントでクリーン。フォールディング・ハードトップはトランクリッドに綺麗に格納されている。開閉もスイッチひとつで済む。
Z3の強調されたフェンダーや4本出しのマフラーカッターと比較するとSLK32 AMGは控えめ。2本のテールパイプが出ているくらいの違いしかない。フロントフェンダーに「V6 Kompressor」というエンブレムが付き、専用の10スポーク・ホイールが僅かに主張する程度。
手に届くところにある優れたパフォーマンス
エンジンは当時のEクラスに採用されていた、3.2L 18バルブのV型6気筒エンジン。M112と呼ばれるユニットで、排気量はSLK32の数字の由来でもある。メルセデス・ベンツ製の5速ATを介して後輪を駆動する。
エンジンにはツインスクリュー・スーパーチャージャー、「コンプレッサー」とインタークーラーが追加され、最高出力は標準の223psから350ps近以上へと増強されている。最大トルクも13.8kg-m増しの45.8kg-mを発生する。
パワーデリバリーは、同時期のAMG製EクラスやSLクラスに搭載されていた、V型8気筒コンプレッサーほど即時的ではない。だが明確に力強い。勇ましい排気音にスーパーチャージャーの唸りが重なり、分厚くたくましいサウンドが響く。
音響的な変化は乏しい。3500rpmを超えた当たりでパワー感が高まってくるが、レッドライン付近まで回しても、特に音質的な高揚感はない。
SLK32 AMGの魅力は、優れたパフォーマンスが手に届くところにあること。メルセデス・ベンツ製のスピードシフトATは、シフトノブをDポジションで左右に倒すとマニュアル操作できる。実際はATの変速プログラムに合わせてタイミングが調整されるけれど。
ドライバーは右足を正しく操作するだけ。SLK32が本気になれば、160km/h加速もわずか11.2秒でこなし、250km/hでリミッターが掛かるまでスピードを乗せていくのが爽快だ。
後半ではBMW Z3 Mロードスターを見ていこう。