FFでも退屈じゃない 最新F40 BMW 118i Mスポーツに試乗 モダンなハッチバック
公開 : 2019.10.21 09:50
活発なエンジンと良く調律された操縦性
ロータリーダイヤルのiドライブ・コントローラーが残されており、インフォテインメント・システムの反応や操作性は良好。モニター式のメーターは、読みやすさよりグラフィック性が優先され、レイアウトも良いとはいえず、あまり好きにはなれなかった。
試乗車は19インチホイールにMスポーツ・サスペンションを備えていたが、先代の1シリーズよりも上質で角の取れた走り味を備えている。3気筒ガソリンエンジンは相当に静かでスムーズ。パワーの発生も即時的で回転域を問わずトルクも豊かで、活発な加速力を簡単に引き出せる。
5000rpm以上まで回したいと思えるユニットではないものの、必要ならいとわない。6速MTはロングギアに設定されているが、実環境での燃費はそれなり。いくつかの走行パターンを平均させた今回の試乗では、14.0km/L程度に留まった。高速道路を気をつけて走らせれば、もう少し伸びるだろう。
クルマの乗り心地は硬め。だがスポーティなサスペンションを装備していることを考えれば、充分に落ち着きがあり、路面からの入力を良く処理してくれている。クルマの姿勢制御も良好で、ハンドリングも正確性が高く無駄がない。だが過度に機敏だったり、ドライバーを誘ってくるタイプでもない。
BMWの技術者が、駆動方式の変化を正当化させるべくクラス最高のハンドリングを与えたのでは、と期待するなら少しがっかりするかもしれない。BMW 1シリーズのダイナミクス性能の味付けは、良く調律された実用性に振ってある。
コーナーにハイスピードで突っ込むというより、スマートに漸進的にクルマは向きを変えるタイプ。過去のモデルを振り返って、プレミアム・ハッチバックを本当の「ドライビングファン」に仕立てることは、間違いだと考えたのかもしれない。
ドライバーが退屈に感じることはない
ステアリングホイールには充分なフィードバックがあり、フロントタイヤの状況を掴み取ることができる。だが高いグリップレベルと精度に優れたハンドリング、ダンパーの設定などを組み合わせ、高速での移動を安楽に行えるように仕立ててある。1シリーズのドライバーが求めるものなのだろう。
新しい1シリーズは、ドライバーが得られる満足度で測れば、多くのライバルとなるファミリー・ハッチバックを凌駕している。優れたFFの現代的なハッチバックだ。先代が採用していたFRというレイアウトは、多くの恩恵を与えることはなかったといえる。
この1シリーズは、世間一般の「標準的なドライバー」に合わせるために、選べる手段の中から取捨選択したクルマ。BMWは数年間の調査を経て、このクラスの多くのドライバーが、駆動方式を気にしていないことに気付いたのだ。
コンパクト・ハッチバックのルールブックに準じた、メルセデス・ベンツAのクラスを追いかける新しいBMW 1シリーズが成功を収める可能性は高い。古いしがらみから脱し、ダイナミクス性能で頂点を取ることはなくとも、ドライバーが退屈に感じることはないだろう。
BMW 118i Mスポーツのスペック
価格:2万7230ポンド(362万円)
全長:4319mm
全幅:1799mm
全高:1434mm
最高速度:212km/h
0-100km/h加速:8.5秒
燃費:16.6-16.1km/L(WLTP複合)
CO2排出量:−
乾燥重量:1290kg
パワートレイン:直列3気筒1499ccターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:140ps/4600-6500rpm
最大トルク:22.3kg-m/1480-4200rpm
ギアボックス:6速マニュアル