ボウラー・ディフェンダー・チャレンジ 英国クロスカントリー選手権に挑戦 ラリー世界への第一歩 前編
公開 : 2019.11.10 07:50
ラリー競技の門戸を広げようと創り出されたボウラー・ディフェンダー・チャレンジで英国クロスカントリー選手権に挑戦しました。サーキットとはまったく異なる世界に最初は苦労しましたが、最後はすっかりオフロードの魅力にハマってしまったようです。
新しいダンパーが必要
ここは決してサスペンションセッティングをするのに、「左のダンパーをあと半分締め上げて」というような場所ではない。
ボービントン駐屯地は第1次世界大戦中、フランスのソンムへと向かう機関銃軍団所属の戦車部隊が訓練を行った場所であり、当時乗組員たちは排気量16Lの直列6気筒ダイムラー・ナイトエンジンとともに狭いキャビンへと詰め込まれていた。
当たり前の日に当たり前のサーキットで当たり前のレーシングマシンに乗っているのであれば、コーナー入口の路面の荒れを頭に叩き込もうとするだろう。
だが、泥にまみれたボービントンのモーグルコースでは、荒れた路面のお陰で頭にはまるでインド式ヘッドマッサージを受けている様な衝撃が伝わってくる。同じモータースポーツの舞台だが、ここは「新しいダンパーが必要です」と言いたくなるような場所だ。
いま全6戦が行われる英国クロスカントリー選手権(BXCC)のラウンド4に参戦しているのであり、週末に行われるこのクロスカントリーラリーでは、金曜日に車検が行われ、土曜日と日曜日に全長8kmのコースをそれぞれ7周と5周することになる。
合計タイムがもっとも少なかったドライバーが勝者だが、非常にタフなコースでは参加車両のおよそ1/3が完走を逃すことになる。切り詰めたボディに車高を上げ、ジャガー製V8エンジンをミッドマウントしたゼッケン55番のこの狂暴なルックスのルノー・クリオもすでに完走は難しいようだ。
まるでマッドマックス2
だが、完走が難しいのはこのクルマだけではない。今回のイベント用に設置されたメンテナンスエリアには、まるで映画「マッドマックス2」に登場する石油精油所のような光景が広がっている。
ほとんどフレームだけになるまでストリップアウトされたディフェンダー・ピックアップがあるかと思えば、1.0Lターボエンジンが唸りを上げ、長大なストロークを持つサスペンションを備えたオープンホイールの四輪バギーは、まるで吹き矢から発射されたアシナガグモのようだ。
そのオープンホイールの4輪バギーと同じように見えるが、456psを発揮するBMW製S54エンジンを1200kgのボディに組み合わせたロフトハウスのマシンには、ひとびとが驚きの眼差しを投げかけている。
ロフトハウス製のベースシャシーであれば1万5000ポンド(210万円)ほどで手に入れることが可能であり、もう少し金額をプラスすればフル車両をオーダーすることもできる。
それでも、BXCCには5000ポンド(70万円)程度の予算で参戦できるクラスも存在しており、いまや伝統的なラリー競技は非常にお金の掛かるものになっているのだから、こうした低コストで挑戦できる点はこのシリーズの大きな魅力だろう。