ボウラー・ディフェンダー・チャレンジ 英国クロスカントリー選手権に挑戦 ラリー世界への第一歩 前編
公開 : 2019.11.10 07:50
その名はボウラー
いまわたしがステアリングを握っているのはボウラーのマシンだ。ワイルドキャットや、その他にも世界的に名を知られたランドローバーのモデルをベースにしたオフロード用スペシャルマシンで、その名を聞いたことがあるに違いない。
だが、このダービシャーに拠点を置く企業では、6日間に渡って行われるラリー・モロッコや、2020年からサウジアラビアを舞台に行われるダカールラリーといった、より長く、タフで、魅力的なレースへ顧客がステップアップするための場としてBXCCを位置付けている。
いかにマシンを転倒させることなくコースを走り切るかを、ドーセットやダンフリースを舞台に比較的控え目なモディファイを施されたこの6万ポンド(840万円)のディフェンダー・チャレンジで学ぶほうが、英国から数千kmも離れた砂丘で苦労するよりは望ましいだろう。
かつてホンダに努めていたセールスディレクターのチャーリー・デービスは、BXCCであればラリーレイドという競技が持つ予測不可能性とともに、計画どおりにことが運ばなくとも諦めない姿勢を学ぶことができると言う。
2500ポンド(35万円)を支払えば、ボービントンのようなイベントで2日間の体験参加が出来るプログラムをボウラーでは提供している。
何がしたい?
これが海外で行われるラリーであれば、顧客は自前のマシンを用意するだけでなく、そのサポート費用も驚くべきものになるが、その代わり、ドライバーが夜寝ている間に16万ポンド(2241万円)のボウラー・ブルドッグV8の修理をしてくれるメカニックチームを手に入れることができる。
だからこそ、デービスのメッセージはシンプルであり、何をしたいのかハッキリさせることが重要だと彼は言う。
では、わたし自身、何がしたいのか分かっていたのだろうか。
日曜朝のパレードラップでは、クルマという乗り物に乗って、これほど自らの慣れ親しんだ世界から遠く離れた経験をしたことがなかったというほどに打ちのめされた。
歩くようなスピードでさえ、強烈な地面の凹凸や、われわれが乗るディフェンダーを森の中の狭いセクションへと追い込もうとする、目眩を引き起こすほどの急傾斜に大きな不安を感じる。
自らを痛めつけようとしているのか、それとも自らのプライドを保つために出来る限り速く進もうとしているのかと考えたが、いまそのどちらがより重要なのかすら分からない。
助手席に座るジョン・トムリーはコースのすみずみまで知り尽くしており、かなりのスピードでもすぐにその記憶を呼び起こすことができるが、さらに「スロットル操作に気を付けて、あまりステアリングに頼らないように」といったアドバイスまでしてくれる。