ボウラー・ディフェンダー・チャレンジ 英国クロスカントリー選手権に挑戦 ラリー世界への第一歩 後編
公開 : 2019.11.10 16:50
オフロードのケーターハム・セブン
ディズニー映画の「ファンタジア」に登場するカバのバレリーナ、ヒヤシンス・ヒッポのように、驚くべき優雅さでヘアピンコーナーに轍を作りつつ、4速ギアでの巧みなスライドでクリアすれば、あとに残るのは見事に平らになった路面だ。
同じように少しでもチャンスがあるとみて、思い切って中速コーナーへとオーバーステアのまま突っ込んでみる。スタンダードのままのダルなステアリングと、フロントタイヤをそのまま引きずっていく1750kgもの車重に対応すべく、ディフェンダーが進路を変えるまでの反応の遅れにドライバーは対処する必要がある。
つまり、ドライバーには先を読んだ運転が求められているのだ。特にペースが上がった時には、ロールケージで補強されたAピラーをコーナーのイン側へと付け、出来る限り早くノーズの方向を変える必要があるが、時にはさらなる旋回のためによりイン側へと慎重に攻め込む必要がある。
こうした瞬間がもっともドライビングの楽しみを感じさせてくれるのであり、素早いトルクの立ち上がりと、このクルマの車重を考えれば驚くべきそのブレーキング性能があれば、ほとんどの問題に対応することが出来るだろう。
そのすべてが、まさにサーキットで走らせるケーターハム・セブンのオフロード版であり、まさに病みつきになる心臓がドキドキするような経験だ。
ラリーへの最高の第一歩
翌朝はレッスンだった。まさに日曜学校だ。電気的な不具合のせいでディフェンダーの2.2Lターボディーゼルは沈黙を保っていたが、トムリ―がキルスイッチをいじると、ふたたびエンジンは息を吹き返し、ほとんど中断することなくラップを重ねることができた。
何だか物足りない。イライラのせいでステアリングを強く握り過ぎミスが増えて来たようだ。その1周後、突然コンクリート製の柱に軽く接触してしまった。ボウラー社のメカニック、ジョージとパットがけん引車とストラップで引き出してくれたが、彼らにそんな手間を掛けたくはなかった。
さらに左のリアダンパーまで失ってしまったために、ディフェンダーはまるで落ち着きのない子供のように激しく上下動を繰り返す。マシンの調子が悪くなり、リズムを失った時に冷静さを保つのは容易なことではないが、まさにそのためにこの場所にいるのではないだろうか?
お昼時になって、コース中心のフィニッシュ地点からパドックへと戻ってきたが、少なくともディフェンダーをバラバラにせずには済んだようだ。
なんと学びの多い週末だろう。自分のことをサーキット向きのドライバーだと思っていたが、月曜になっても途切れることのない興奮が、もしかしたら本当はオフロード向きなのかも知れないということを教えてくれた。
つねにリスクとその見返りが表裏一体となったこの場所と、これまでほとんど馴染みのなかった素晴らしいレースカーを愛している。そして、事態が悪化すればするほど、もちろん人間という要素も忘れることはできない。
ボウラーとBXCCとは、壮大で素晴らしいお楽しみであり、ラリーの世界へ足を踏み入れるための最高の第一歩だ。