アルピナB8 4.6は、なぜ「例外」なのか V8ねじ込むために「あの手この手」

公開 : 2019.10.26 05:50  更新 : 2021.10.11 14:52

「アルピナ」。ふしぎな響きをもった言葉です。それは、このブランドそのものが、特異なヒストリーを歩んできたからでしょう。なかでもB8 4.6は「例外」。ヒストリーを遡るとともに、B8 4.6にフォーカスします。

そもそもアルピナとは? あらためて

photo:Satoshi Kamimura(神村 聖)

いきなり「このクルマはB8 4.6です」と言われて、オォ!と声を上げるのはよほどのマニアだと思う。

「そもそもアルピナってどんなクルマなの? パッと見BMWにしか見えないけど」というのがよくある反応に違いない。

自動車メーカーとなる前のアルピナはチューナーとしてレース活動にも積極的に関与していた。BMWは3.0CSLによるツーリングカー・レース活動の一切をアルピナに任せていた。3.0CSL、通称「バットモビル」のフロントウインドーにはALPINAの文字が入れられている。  出典:アルピナ
自動車メーカーとなる前のアルピナはチューナーとしてレース活動にも積極的に関与していた。BMWは3.0CSLによるツーリングカー・レース活動の一切をアルピナに任せていた。3.0CSL、通称「バットモビル」のフロントウインドーにはALPINAの文字が入れられている。  出典:アルピナ

そこで今回はしっかりアルピナ何たるか、から書き進めていくことにする。

アルピナ社は1965年、アルピナ・ブルカルト・ボーフェンジーペン有限&合資会社として誕生している。

現在ではドイツの小さな自動車メーカーとして認められているアルピナ社だが、設立された当初はチューナーとしてBMW車を手掛けその評価を高めていた。

もちろんアルピナ・チューンのエンジンやマシーンはモータースポーツの世界でもすぐに頭角を現し、70年代に入るとBMWから3.0CSLによるツーリングカー・レース活動を任されることになる。

1978年にブッフローエに自社工場を設けたアルピナ社は、そこでBMWをベースにした市販コンプリートカーの製造を開始している。

チューナーから自動車メーカーへと華麗な転身を遂げたのである。

アルピナ社の優れた仕事はBMW本社も認めている。同社のコンプリートモデルにはBMWの新車保証が適用され、BMWディーラーでメンテナンスを受けられる。

アルピナは自らの卓越した技術によって自動車世界で唯一とも言える特権を勝ち取っているのだ。

日本のアルピナ/唯一の例外B8 4.6

日本でもアルピナのコンプリートモデルは古くから発売されている。

ニコルオートモビルズが日本におけるアルピナの正規代理店として、1979年のB7ターボを皮切りに積極的に展開しているのである。

コンプリートカー・メーカーとなったアルピナの最初の作品がこのB7ターボ。しかもこの個体はニコルオートモビルズが輸入した1号車でもある。ボディサイドのデコストライプは現在のものより線が太く良く目立った。
コンプリートカー・メーカーとなったアルピナの最初の作品がこのB7ターボ。しかもこの個体はニコルオートモビルズが輸入した1号車でもある。ボディサイドのデコストライプは現在のものより線が太く良く目立った。

今日のアルピナはガソリン・モデルのみならず、独自開発によるディーゼル・エンジン・モデルも販売するなど幅広いラインナップを揃えている。

通常のアルピナ・モデルはBMWをベースとして、エンジンや足回り、そしてインテリアといった箇所にアルピナ独自のチューニングを施し、トータルバランスを高めるスタイルが一般的となっている。

アルピナのダンパーといえばビルシュタインと決まっており、タイヤはかつてはミシュランのみだったが現在はピレリもアルピナ専用品を仕立てる。

今回の主役であるBMWアルピナB8 4.6は、数あるアルピナの中でも特別なモデルと言われている。その理由はエンジンとボディの組み合わせが通常のBMWのラインナップにないものだからである。

BMWが直4と直6エンジンしか搭載しなかったE36 3シリーズのエンジンベイに大胆な改造を施し、V8エンジンを落とし込んだのである。

本家BMWが眉をひそめそうなほどの大改造こそが、B8 4.6に唯一の例外ともいえる特別なポジショニングをもたらしているのだ。

記事に関わった人々

  • 吉田拓生

    Takuo Yoshida

    1972年生まれ。編集部員を経てモータリングライターとして独立。新旧あらゆるクルマの評価が得意。MGBとMGミジェット(レーシング)が趣味車。フィアット・パンダ4x4/メルセデスBクラスがアシグルマ。森に棲み、畑を耕し蜜蜂の世話をし、薪を割るカントリーライフの実践者でもあるため、農道のポルシェ(スバル・サンバー・トラック)を溺愛。
  • 神村聖

    Satoshi Kamimura

    1967年生まれ。大阪写真専門学校卒業後、都内のスタジオや個人写真事務所のアシスタントを経て、1994年に独立してフリーランスに。以後、自動車専門誌を中心に活躍中。走るのが大好きで、愛車はトヨタMR2(SW20)/スバル・レヴォーグ2.0GT。趣味はスノーボードと全国のお城を巡る旅をしている。

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