マニアひれ伏すV8+3シリーズ アルピナB8 4.6に試乗 20世紀メカニカルチューンの極み

公開 : 2019.10.27 05:50  更新 : 2021.10.11 14:52

危うさこそ、B8 4.6の揺るがない価値

メルセデスの500EがW124でありながら格の違いを感じさせてくれるように、B8 4.6もE36らしからぬ重厚さを帯びている。

フロントに重量物があることがはっきりとわかり、そのためにステアリングもクラッチも明らかに重い。

現在のBMW 3シリーズよりはるかにコンパクトだが、シャープなハンドリング等に定評があったE36 BMW。そのアルピナ版は4.6Lの自然吸気V8エンジンを中心として各部のバランスがとり直されている。
現在のBMW 3シリーズよりはるかにコンパクトだが、シャープなハンドリング等に定評があったE36 BMW。そのアルピナ版は4.6Lの自然吸気V8エンジンを中心として各部のバランスがとり直されている。

低速域ではズシッという重さが走りの印象の大半を占めるが、スピードに比例して車体に羽が生えたような軽さが宿りはじめる。

極めつけは、スロットルのひと踏みした瞬間に襲う、背中をけ飛ばされるような強烈な加速だ。こうなると265幅のリアタイヤでも安心はできない。

アルピナの真価は、格段にアップしているエンジンパワーをしっかりと受け止め、それでも乗り心地を犠牲にしない足回りのセッティングにある。

若干フロントヘビーでリアが軽く感じられるB8 4.6でも辛うじてアルピナの公式には則っている。

だが他のアルピナと比べれば、そのマナーは荒々しい。アルピナでありながら、その限界を軽く飛び越してしまいそうな危うさこそが、B8 4.6というレジェンドモデルの揺るがない価値なのだろう。

現在のアルピナのラインナップを見回しても、B8 4.6ほどの破天荒なモデルは見当たらない。90年代のバブル崩壊の余韻が、B8 4.6のようなハイパーモデルを偶発的に生み出したのだろう。

世界中で売れまくったE36 3シリーズの中で最もインパクトの強い快速モデル。B8 4.6は記憶に残る1台といえる。

記事に関わった人々

  • 吉田拓生

    Takuo Yoshida

    1972年生まれ。編集部員を経てモータリングライターとして独立。新旧あらゆるクルマの評価が得意。MGBとMGミジェット(レーシング)が趣味車。フィアット・パンダ4x4/メルセデスBクラスがアシグルマ。森に棲み、畑を耕し蜜蜂の世話をし、薪を割るカントリーライフの実践者でもあるため、農道のポルシェ(スバル・サンバー・トラック)を溺愛。
  • 神村聖

    Satoshi Kamimura

    1967年生まれ。大阪写真専門学校卒業後、都内のスタジオや個人写真事務所のアシスタントを経て、1994年に独立してフリーランスに。以後、自動車専門誌を中心に活躍中。走るのが大好きで、愛車はトヨタMR2(SW20)/スバル・レヴォーグ2.0GT。趣味はスノーボードと全国のお城を巡る旅をしている。

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