期待通りの優雅な時間 フランスの自動車コンクール シャンティイ 後編

公開 : 2019.11.03 16:50  更新 : 2020.12.08 10:56

2019年6月末、魅惑的な雰囲気を漂わせるクラシックカーが、パリ郊外のシャンティイ城へと集結しました。今回で5回目となり、ベスト・オブ・ショーのノミネート車両だけでなく、ブガッティやヴォワザンなどテーマ別の展示も特徴です。

バッロやヴォワザンなども展示

text:Mick Walsh(ミック・ウォルシュ)
photo:Eric Audas(エリック・アウダス) /Mick Walsh(ミック・ウォルシュ)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
2019年に5回目を迎えた自動車コンクール、シャンティイ・アート&エレガンス。会場には、フランスの自動車メーカー、バッロ社の工場が閉鎖されてから100周年目を記念して、多くのバッロも展示された。

これはオーストリアのエンスージャスト、アレクサンダー・ショーフラーによって企画された展示。彼はインディアナポリスやイタリアグランプリに出場歴のある、1920年製バッロ3/8 LCを所有している。

第5回シャンティイ・アート&エレガンス
第5回シャンティイ・アート&エレガンス

バッロ3/8 LCはブルックランズでのレースにも出場した。「素晴らしい歴史を持つクルマです。2021年にモンツァでパレードランの先頭を走って欲しいと招待も受けています。今から楽しみです」 とオーナーのショーフラーが教えてくれた。

フロリダからレストアを受けたバッロ5/8 LCレーサーも参加した。1919年のインディアナポリス500で、ルネ・トーマスのドライブにより168.5km/hを出し、ポールポジションを獲得している。この2台のクルマを含めて参加したバッロ・レーサーは厳正に審査され、優秀賞は別の5/Cが獲得した。

バッロのロードカー・クラスの方は、すんなり優秀賞が決まった。ベルギーから参加した1921年製2LS No21だ。パーク・ワード社の手による3名乗車のボートのようなボディは、見事な状態で保存されている。2LSはバッロ社初のツインカムエンジンを搭載した量産スポーツカーで、当時最速の性能を誇った。

他にも、名前を聞くことすら珍しい11台のヴォワザンも壮観だった。4Lのナイト4エンジンを搭載する1919年のC1ツアラーや、C25クレリエールなどが集合。2011年のペブルビーチ・コンクール・デレガンスで優勝したC25エアロダインが、このクラスで優勝している。晩年の真のヴォワザンだといえる。

モータースポーツにも注力

注目だったのが、キャンプ好きだったガブリエル・ヴォワザンのために特別に作られたショート・シャシーを持つC15。特注のランニングボードが特徴で、釣り竿と、キャンプ用品を運ぶ大きなリアトランクが備わっている。

他にもヴォワザンが最後に設計したビスクーターC31も面白い。125ccの2ストロークエンジンを搭載したマイクロカーだ。後にスペインのオート・ナショナルSA社によって、193ccのエンジンに載せ替えてライセンス生産されている。

第5回シャンティイ・アート&エレガンス
第5回シャンティイ・アート&エレガンス

ビスクーターC31は2万台以上が生産された。だが多くがスクラップとなり、アルミニウム製のモノコックボディ自体が珍しい。

対象的に、1994年から1996年まで開催されたBPR国際GT耐久チャンピオンシップ・レースにちなんだクルマも参加している。サリーンS7RやマセラティMC12 GT1、メルセデス・ベンツCLK-GTRなどがシャンティイに並んだ。

スイスの高級腕時計ブランド、リシャール・ミル社がスポンサーとなり、シャンティイ・アート&エレガンスはモータースポーツも重要なテーマとして掲げている。レーサーのジャッキー・スチュワートが初めて世界チャンピオンに輝いてから50周年を記念し、多くのマトラも展示された。

マトラが制作したF1マシン、MS9とMS10、MS11のほか、アンリ・ペスカロロのMS650、ジャッキー・イクスが駆ったMS5、ジョニー・セルボ・ギャバンのMS84などが並んだ。

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