ロードテスト ダラーラ・ストラダーレ ★★★★★★★★★☆
公開 : 2019.10.26 11:50 更新 : 2019.10.29 19:18
操舵/安定性 ★★★★★★★★★★
高名なテストドライバーであるロリス・ビコッキ最初の大仕事は、ランボルギーニ・カウンタックのシャシー開発補佐だった。その後、ダイナミクスのチューンを手掛けたスーパーカーのラインナップはそうそうたるものだ。たとえば、パガーニ・ゾンダやブガッティ・ヴェイロン、ケーニグセグCCXなどである。
このストラダーレでは、元レーサーのマルコ・アピチェラとともにサスペンションのチューンを手掛けた。ビコッキよりずっと若いアピチェラは妥協なきサーキット向けセッティングを望んだが、老練なテストドライバーはそのアプローチをなだめたとか。
なにはともあれ、シャシーは路面に対する非凡な衝撃吸収性を発揮しつつも、その動きをきっちり伝えてくれる。テスト車のダンパーは、3段階のプリセットのうちの真ん中で、低速での乗り心地はかなりアグレッシブで快適とはいえないが、速度を上げると、ホイールコントロールはミリ単位に感じられ、ボディの挙動はみごとにクッションの効いたものとなり、思わず笑みがこぼれる。
カーボンタブの軽量マシンでしばしばみられるサスペンションからの騒々しいノイズも、まったくないのでかえって不安になるくらい。この価格を正当化できるエレガントさや滑らかさを感じさせる走りだ。
ノンアシストのステアリングもまた、敢えて言及する意味のあるものだ。ロータス・エキシージのそれほど並外れたものだと感じられるかどうかは議論の余地があるものの、公道上ではブレをまったく感じさせず、この上なくデリケートだ。
固定レシオのラックは、サスペンションの小さくはない上下動をはっきり手のひらに伝える。これほど直感的に、英国の道を素早く駆け抜けるクルマは滅多にない。
そうはいっても、公道では究極のハンドリング性能の片鱗しか感じられない。オプションのピレリPゼロ・トロフェオRにいったん熱が入れば、グリップは驚異的というほかない。重量配分はややリア寄りに感じられるが、往々にしてストラダーレはミドエンジンらしいニュートラルさを、純粋極まる感覚で示す。
しかしながら、タイヤが冷えている間は、後輪が座面のすぐそばで希有なバランスで穏やかにブレイクするまで、ただただアンダーステアに身を任せるだけだ。まるで、驚くほど高額な学費を払ったハンドリングスクールを卒業したばかりといった感覚だ。もちろん、出たばかりであるのは確かなのだが。