世界最大の寒冷地テスト施設に潜入 極寒の世界 秘密は「スノーハウ」 前編

公開 : 2019.11.16 08:50

さらなる拡張計画

「今年後半からは米国でも新たなスノータイヤの規格が導入されるため、ピックアップ向けの追加試験をいま行っているところです」とソールヤルビは言う。「2020年に向けては、EUでも新たなアイスタイヤの規制が導入されるため、さらなる試験が予定されています」

需要の高まりに応えるべく、テストワールドでは2015年に屋内のハンドリングサーキットを、2018年には新たな直線コースをオープンさせるとともに、今年の春にはふたつのターマック舗装を施したコースも追加している。

ここでのテストによって、タイヤメーカーは最適なコンパウンドとトレッドパターンを見つけ出すことが出来る。
ここでのテストによって、タイヤメーカーは最適なコンパウンドとトレッドパターンを見つけ出すことが出来る。

さらに、夏場でもまるで-40℃の酷寒のなかに一晩放置された状態を作り出せるほどの能力を持った、何台かの冷凍コンテナの姿まで目にすることが出来る。

「数年前、あるメーカーがEVのプロトタイプを持ち込んだことがありましたが、こうした極限の低温状態では始動できないことが明らかとなりました」とソールヤルビは思い返す。「大いに感謝していただきました。彼らはその問題を解消すべくここを後にしたのです」

現在、テストワールドでは空港近くの施設で20kmのテストコースを、メラトラックスでは80kmのコースを運営しているがそのうち1.2kmは屋内に設置されている。

今後5年程度で実現予定の拡張計画には、さらにふたつの室内コースの増設が含まれており、現在の4倍に達する10平方キロメートルまでメラトラックスを拡張すべく、ソールヤルビはすでに必要な土地も確保している。

注目は屋内高速サーキット 超現実の世界

この計画のなかでももっとも注目すべきは巨大な屋内の高速サーキットであり、インドアXと名付けられたこのコースの面積はサッカー場8面分に相当する6万平方メートルにもなる。

今回、インドア2と呼ばれる350mのストレートと9mのコース幅を持つキドニー型のオーバルコースで、何台かのテストワールドが所有するプロトタイプ車両のステアリングを握ることを許されたが、インドアXはインドア2の3倍もの広さになるという。

英国版AUTOCARスタッフがテストワールドの氷を破壊する。
英国版AUTOCARスタッフがテストワールドの氷を破壊する。

初めて真新しいアスファルト舗装が施されたテストワールドのコースへと足を踏み入れた時には、まるでこれは現実ではないように感じられた。

明るく暖かな日差しを受け、多少湿気はあるかも知れないが雪や氷とは無縁の世界から、断熱材をほどこされたドアを開け一歩足を踏み入れると、温度は直ぐに-10℃まで下がり、分厚いジャケットのシッパーを上まで引き上げて吐く息は真っ白だ。

まるで工場のような印象の建物の内部を照明が明るく照らし出しており、400mほどのコースの片側は完全に氷結している一方、反対側はウェットの状態を保っている。

ここはインドア4とインドア5と呼ばれる施設であり、8m幅の2本ある205mのコース表面では、氷やドライ、ウェットだけでなく、さまざまな路面状況を再現することができる。

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