アウディRS7スポーツバック
公開 : 2013.07.18 19:30 更新 : 2017.05.29 18:18
■どんなクルマ?
アウディRS6アバントに続き552bhpの4.0ℓのV8ツインターボ・エンジンを搭載するモデルが、このRS7スポーツバックだ。トルクも71.3kg-m/1750-5500rpmと強大で、8速のオートマティック・トランスミッションを備え、4WDシステムを持つ。DTMサウンドを響かせながら0-100km/h3.9秒という俊足マシンである。
そのパフォーマンスでは、BMW M6グランクーペ、メルセデス・ベンツCLS63 AMG、ポルシェ・パナメーラ・ターボなどとライバル関係となるが、その中でも0-100km/h加速が4秒を切るのは、このRS7スポーツバックだけである。
RS7スポーツバックは、アジャスタブルなエア・サスペンション、10%の燃費向上が望めるシリンダー・ストップ・システムを装備し、最高速度は通常だとリミッターの効く250km/h。オプションのVマックス・ブースティング・ダイナミック・パックを装備すれば、280km/hまたは305km/hにトップスピードを設定することもできる。
クアトロ・システムは、通常リアに60%のトルクを配分するが、リミテッド・スリップ・デフとトルク・ベクタリングが必要に応じてその配分を変える。また、エア・サスペンションに代わってダイナミック・ライド・コントロールもオプションで選択できる。またカーボン・セラミック・ブレーキもオプションで選択できる。ちなみにテストしたモデルにはマット・デイトナ・グレーにペイントされたカーボン・セラミック・ブレーキが付けられていた。
■どんな感じ?
ダイナミック・モードを選択すれば、とてつもないサウンドを伴ってシフトアップしていき、まさに雷のような加速を見せる。少なくともドライな路面であれば、地平線がぐんぐんと近づいていく感覚が襲い掛かることになる。
多くのハイエンド・アウディ同様に、DRC(ダイナミック・ライド・コントロール)はコンフォート、オート、ダイナミックの3モードが用意されるが、これはサスペンション・セッティングだけでなく、加速やステアリング・セッティング、シートベルトのプレテンショナーまでも変更が行われる。このセッティングには若干の奇妙な面もある。例えば、コンフォート・モードでフルパワーをかけると、トルク・ステアのようにステアリングがのたうち回ることがあるのだ。残念ながら、どんなセッティングを選んだとしても、DRCはドライバーが望むほどのフィードバックを伝えてくれない。
DRCはピッチやロールを低減することには寄与するが、その反面、乗り心地が犠牲になる。特に21インチのホイールを履くモデルであれば尚更だ。その乗り心地はあまりに固いため、アウディのシャシー・エンジニアであるDr.ホースト・グレーザーは、英国ではこのオプションを選ばないようにという忠告をしている。もちろん、ドイツのような滑らかな路面の多い国では、このDRCを選択することは間違いではない。
このサスペンションはサーキットで走行するのに最も適したアシであるとグレーザーは語っている。RS7スポーツバックのありあまるパワーを生かすのには、サーキットという舞台、あるいは本当のオープン・ロードかもしれない。実際、通常の道ではそのパフォーマンスを充分に味わうことができないのだ。
また、本当に右足に込める力のバランスでマシンをコントロールする楽しみは、AMG、BMW、そしてポルシェの方が優っているといえるだろう。
■「買い」か?
確かにRS7スポーツバックのパワーは有力な武器だ。高速道路などでは、そのパワートレインは本当に頼もしい力を発揮してくれる。また、ハイウェイ・クルージングでは快適なモデルでもある。
それでも豪華で優雅なハイウェイ・エンターテイメントを望むのであれば、古典的なフロント・エンジン・リア・ドライブのBMWやメルセデスの方がより楽めるといえる。RS7スポーツバックの魅力は、その卓越したパワーにのみあるような気がする。そして、RS7を選ぶのであれば、DRCはオプションとして選択しないことが重要だ。
(リチャード・ブレムナー)
アウディRS7スポーツバック
価格 | £83,495(1,265万円) |
最高速度 | 250km/h(280km/h、305km/hはオプション) |
0-100km/h加速 | 3.9秒 |
燃費 | 10.2km/ℓ |
CO2排出量 | 229g/km |
乾燥重量 | 1995kg |
エンジン | V型8気筒3993ccツインターボ |
最高出力 | 552bhp/5700-6600rpm |
最大トルク | 71.3kg-m/1750-5500rpm |
ギアボックス | 8速オートマティック |