ロードテスト ルノー・メガーヌRS ★★★★★★★★☆☆
公開 : 2019.11.02 11:50 更新 : 2021.03.05 21:34
走り ★★★★★★★☆☆☆
直線加速だけを見れば、トロフィーRの価格には頷けるものではない。たしかに、前輪駆動の市販車としては最速レベルの1台に数えられるが、この価格に期待するような、ライバルを蹴散らすほどの速さとはいえない。
また、失望するほどではないが、1つ2つの性質的な問題により、そのエンジンの働きぶりには、性能以上に驚かされることはない。
ドライコンディションのテストコースでマークした0−97km/h加速の最速タイムは、5.5秒をわずかに切る。往復テストの平均値は5.6秒だ。2017年に計測したホンダ・シビック・タイプRより0.1秒速く、さらにその前年のフォルクスワーゲン・ゴルフGTIクラブスポーツSさえ凌ぐ。しかし、決定的な差ではない。
このエンジンのレヴリミッターは静止状態から、どれほどのトルクをクラッチへ送り込むか制御するが、テスト車のローンチコントロールはきわめて散発的にしか機能しなかった。しかも、機能しても目覚ましい結果は生まなかった。
けれども、タイヤが温まり、1人乗りで、ドライバーがスロットルやクラッチを完全に支配できると確信できるならば、5秒の壁を破る前輪駆動車になれると思えるのだが。
だが、もろもろの数字を精査すれば、この1.8L直4ターボは、ちょっとばかりトロフィーRの名にふさわしくないことが見えてくるだろう。
変速ありの48−113km/h加速では、シビックRを上回れない。0−161km/hのダッシュでは、先述したシビックにもゴルフにもわずかばかり及ばない。209km/hに達してもそれが逆転できなかったことは、メガーヌが図った空力の改修が、狙ったほど賢明なものでなかったことを示唆している。
運転中は、このパワートレインのパフォーマンスに関して、身体に伝わる過渡的な部分で、細部への注意をおざなりにした感じがはっきりとわかるはずだ。シフトはやや引っ掛かりのあるグニャグニャした感触で、パワーデリバリーの性格は大きなスロットル入力への反応がやや鈍く、ドッカンターボ気味で、たとえ中回転域でもリニアでなく、回転を上げるといささか息切れ感がある。
大幅な軽量化は、このクルマの速さを生んでいるが、チタンエキゾーストは激しい特性の原因でもあり、音にも身がすくむようだ。それでもわれわれは、このエンジンは力強いが現行メガーヌRSのどのモデルでもセールスポイントたり得ず、このクルマではいよいよ信用の限界近くに達しようとしている、と結論づける。