コンパクト・トリオ 英国メーカーの考えた未来 A40とアングリア、ヘラルド 後編
公開 : 2019.11.09 16:50 更新 : 2020.12.08 10:56
1960年代が始まる直前、トライアンフとBMC、フォードは次世代を見据えた新しいコンパクト・ファミリーサルーンを生み出しました。かわいらしいデザインは当時の人気を得ましたが、今も一部の人を魅了する力があるようです。
ヴィテスやスピットファイアにも積まれたエンジン
トライアンフ・ヘラルド・クーペにはツイン・キャブレターがおごられ、サルーンも新しく整備された高速道路に対応するべく、最高速度は114km/hまで出せた。だが実際は街なかや地方道を走らせる方が性に合っていた。回転半径3.8mという小回りの良さも、市街地向きだ。
1960年になると、レイランド・コーポレーションによってスタンダード・トライアンフ社は買収される。だが1961年型のヘラルド1200に向けて、改良版の開発予算は付いた。「パフォーマンスの違いは、比較すれば、という程度のものです」 と説明するバーグマン。
「わたしのヘラルドのエンジンはリビルトしてあるので、かなりパワフルです。948はヘラルド・ファミリーの元祖で、過去のクルマとのつながりも感じられるので気に入っています。デザインは1950年代的。一張羅のスマートなスーツを纏いながら、緊縮時代に足を踏み入れた感じもします」
エンジンサウンドから、ヘラルド948のルーツを知ることができる。控えめなトライアンフのエンジンは、ヴィテスやスピットファイア、GT6にも搭載されたもの。白い盤面のスピードメーターがおしゃれだけれど。
ヘラルドとA40がコスト重視のイタリアン・デザインをまとったクルマなら、フォード・アングリアは、ハリウッドとブリティッシュ・ロックの魅力的なフュージョン、といったところだろうか。
英国フォードの新しい風
1959年、英国フォードがアメリカ・フォードの古い技術を流用していたことは誰しも知るところだったはず。その9月にロンドン・モーターショーで発表されたアングリア105Eは、英国フォードに新しい風を吹き込んだ。
逆スラントしたリアガラスが特徴的なボディ。興味を持った顧客には、雨や雪による視界不良を防ぎ、リアシートは夏の暑さからも開放されると紹介された。当時としては、かなり強い印象を抱かせるコンパクトカーだった。
105Eのエクステリアデザインは、マーキュリー・モントレーや1955年のピニンファリーナ・デザインのフィアットから触発された、と説明されていた。その美学までは取り込めていなかったと思うが。
クルマ好きはオーバースクエアのエンジン設計に注目。レーシングドライバーのシドニー・アラード
は、スーパーチャージャーで武装したアングリアに乗り、1963年のモンテカルロ・ラリーでクラス優勝を挙げている。
今回の1966年式アングリア・デラックスのオーナー、ジェイソン・バーンズも性能の高さに触れた。「一時期はSUのキャブレターに交換していましたが、今は標準仕様に戻しています。それでも充分な走りを披露します。4速MTは英国フォードとして初めての採用で、操作性も良い優れたミッションです」
年式の古いオースチンA40「ファリーナ」やトライアンフ・ヘラルド948と比べると、新しいアングリア。電動ワイパーやダッシュボードのジュークボックス用アンプなど、英国フォードとしては初採用の装備も多い。60年前、携帯レコードプレーヤーはトレンディなアイテムだったのだ。