スーパーカー側のグランドツアラー マクラーレンGT V8ツインターボ620ps

公開 : 2019.11.05 09:50

570GTと720Sとの中間の性能を与えられたマクラーレンGT。マクラーレンが描くグランドツアラーの姿とは一体どんなものなのでしょうか。フランスから英国まで、実際にグランドツーリングを楽しみながら、確かめました。

価格や性能は570GT720Sとの中間

text:James Disdale(ジェームス・ディスデイル)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
F1などで名高いマクラーレンによる、グランドツアラー(GT)に対する回答。従来のモデルとは一線を画する内容なことは明白だ。

見ての通り、レーザー張りの空間に包まれた伝統的な大陸横断マシンとは異なる。ミドシップ・レイアウトに極めて機敏な操縦性に、衝撃的なまでのパフォーマンス。贅沢さ以上に、さらにひとサジのスパイスを効かせた、だいぶスーパーカー寄りのクルマ。

マクラーレンGT
マクラーレンGT

マクラーレン720Sの圧倒的な直線加速を、95%くらいの領域まで楽しんでいるドライバーも沢山いる。手首の動作だけで鋭く走らせられるが、日常的に一緒に暮らしていても苦ではない。

前回マクラーレンGTの発表会が開かれたのは南フランス。サントロペの上の丘陵に伸びるカーブの連続する道では、運転にのめり込んだ。だがGTの本来の姿を確かめるには、フランスから英国まで走らせるくらい長距離をともにし、快適性を確かめなければわからない。

まずはマクラーレンGTの概要をおさらいしよう。マクラーレンは独立した新しいモデルだとしているが、価格とパフォーマンスを比べると570GTと720Sとの中間に位置するクルマ。

ボディパネルはほぼすべてが新しくデザインされ、車体全体で見ても3分の2は新設計となっている。スピードテールが登場するまでは、マクラーレンの公道モデルとしては最長のボディを持つ。大きなグラスエリアや電動のリアハッチ、伸ばされたノーズなどは、GTの実用性や扱いやすさを示唆している。

620psと64.1kg-mのV8ツインターボ

インテリアはモダンでラグジュアリー。美しくステッチの施されたレザーやローレット加工の施された金属製のノブなど、思慮が行き届いている。バウワース&ウィルキンス製のスピーカーが収まるパンチングメタルも注目に値する仕上り。

車体後方には420Lという大きな荷室があり、NASA仕様の耐摩耗性に優れた素材が敷かれ、大切な荷物を収容してくれる。エンジンルームの上に位置するが、荷室の床の下へ外気を流し温度の上昇を防いでくれる。40度以下には保たれるようだが、真夏日や渋滞時には、荷物は温まってしまうだろう。

マクラーレンGT
マクラーレンGT

滑らかなボディの内側には、マクラーレンおなじみの強固なカーボンファイバー製のタブと、4.0LのV8エンジンが隠されている。高圧縮比の特注ピストンと、小径で立ち上がりの早いターボが組み合わされている。

最高出力は620ps/7500rpmで、最大トルクは64.1kg-m/5500rpmだが、多くのエネルギーは2000rpm前後から引き出せる。アダプティブ・スポーツエグゾーストを装備し、V8エンジンの目覚めのひと吠えはさほど大げさではない。防音材も増やされ、フラットプレーン・クランクのメカニカルでエッジの効いたサウンドも穏やかになっている。

サスペンションの構造は、マクラーレン720Sと基本的に同一。だがスプリングレートは柔らかくなり、GT独自のアルゴリズムが与えられている。足回りの防音処理も向上し、ステアリングフィールも細かな振動などを消し、上質感を高めている。

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