ドイツ自動車メーカー なぜニッチモデルを続々投入? モデル削減の方針も示唆 その理由
公開 : 2019.11.09 06:00 更新 : 2022.03.24 21:24
すき間を埋めるラインナップ やめるワケ
ドイツ勢は規模拡大を世界市場に求める過程で可能性あるところにマーケットイン型のモデルを相次いで投入。
これにSUVブームが油を注ぐかたちとなり、結果的に余りにも手数を広げすぎたのではないでしょうか。
件のアウディでみれば00年時点ではAの括りで3/4/6/8そしてTTで、4と6にはアバントやらオールロードやらと、ざっくりこんな程度のラインナップだったはずでした。
しかし現在は、Aは1〜8までほぼフルコンプのみならずQも残すは4と6くらい、そこにTTとR8も加わりの、アバントに留まらずスポーツバックやらボディバリエーションもわんさか用意されています。
つまりドイツのプレミアム御三家は、年間販売200万台規模の成長の背景に、これほどの開発や製造の負荷が伴っていたわけです。正直、よくもやったりの感すらあります。
いち早くアウディが減量を表明した背景は、まず主要商圏における景気の減速が挙げられるでしょう。
中国市場はもちろんのこと、足元の欧州市場でも英国のブレクジット動向やドイツ銀行の債務危機など、不確定要因が飛び交っています。
ドイツ国内の話をすれば、従来サラリーマンの報酬の一部として重用されていた車両貸与制度が崩れつつあるという実情も影響のひとつかもしれません。
要は会社主導で与えられるクルマなんかいらんから、相当額を現金で寄越しなさいということでして、クルマ離れはなにも日本に限った話ではないことを思い知らされます。
さらに考えられる理由があります。
ラインナップ削減 さらにもう1つの理由
次いで考えられる理由は自らの手数がどうにも足りないからということ。
現在自動車メーカーはCASEだMaaSだのと、IT絡みで生まれた新しいビジネススキームの気配と必死で格闘しています。
ことのほか自前主義の意識が強く、石橋を叩き壊してしまうほど慎重なトヨタでさえ、協調領域と判断するや躊躇なく出資や技提を結ぶほどです。
こんな時代にアウディは技術による前進なんて社是を掲げているものですから、電動化も自動運転もコネクティビティも最先端でなければグループの技術総代としての立場も揺らぎかねません。
電動化にまつわるeトロンというサブブランドの定着も進めるためには、既存の自動車開発のリソースを大胆に分割、そして再分配する必要にも迫られます。
それらこれらの苦悩を背景に、既存のラインナップを減らすという一見後退的、でも現実的な判断は、恐らく先進性を支持するステークホルダーにはウケもいいはずです。
アウディがそこまで考えているかは別にして、リセッションに不安を感じる出資者にどう対処するかという課題の最もシンプルな解答は、従来型のビジネスを縮小し今後のビジネスに割り当てるというスタンスなのだと思います。
自動車メーカーにとってCASEやMaaSという言葉は相当厄介ではありますが、今この時点では経営計画を大きく動かすに都合のいいキーワードであるのかもしれません。