長期テスト トヨタ・カローラ(2) 電気自動車アレルギーへの処方箋
公開 : 2019.11.04 09:50 更新 : 2021.01.28 16:58
新しく生まれ変わったトヨタ・カローラ。競争の激しいファミリーカーの中で、どれほど優れた内容を備えているのでしょうか。日本ではカローラ・スポーツと呼ばれるハッチバックを、時間を掛けて英国編集部が検証します。
もくじ
ー積算2368km 渋滞で強みを発揮するカローラ
ー積算3265km 多様化するハイブリッド・システム
ーEVも楽しめ、高速でも有効なハイブリッド
ーもっとEVモードで走りたくなる
ー テスト車について
積算2368km 渋滞で強みを発揮するカローラ
東京でいう外環にあたる、ロンドンのM25号線を雨の渋滞時間に走るのは楽しいものではない。だがカローラ・スポーツの強みが発揮される。
軽いステアリングとスムーズなハイブリッドのおかげで、交通量が多い中でも運転は気を使わない。特にエンジンの始動や停止がとてもスムーズで、バッテリーのみで静かに走れることは美点だと思う。
積算3265km 多様化するハイブリッド・システム
英国でセルフチャージ・ハイブリッドと呼ばれるもの。特に見た目上は、無害だ。だが電動化技術の進む自動車業界の中では、議論を呼び起こす名称だといえる。イーロン・マスクの軽率なツイートのように。
このセルフチャージ・ハイブリッドという単語は、これまでハイブリッドと呼ばれてきたものに新鮮味を加えるために、戦略的に与えられたもの。エネルギー回生システムで充電されたバッテリーの電力を用いて稼働する、モーターが付いた内燃エンジンのことを指す。
従来式のハイブリッドを、マイルド・ハイブリッドやプラグイン・ハイブリッド(PHEV)と区別することが目的なようだ。この呼び方が、ハイブリッドが環境に優しくより電動化したイメージがあるとして、一部のEV支持者からの評判は良くないらしい。
セルフチャージといいながら、充電する手段はクルマに搭載されるガソリンエンジンのみ。このシステムはトヨタが20年間に渡って、プリウスを中心に普及させてきたハイブリッド・システムのこと。EVへのステップの1つであり、世界が急速に変化しつつある中で、行き詰まり感もある特化した技術だ。
EVも楽しめ、高速でも有効なハイブリッド
長期テスト車のトヨタ・カローラ・スポーツは2.0Lのガソリンエンジンを搭載し、トヨタ最新のハイブリッド・システムが組み合わされる。欧州での環境規制強化の流れを受けて、ハイブリッドの販売も近年は増加傾向にある。
社会的な流れの中で、トヨタ・カローラにとっては絶好の追い風状況だと筆者は考えている。低速ではEVモードで走行でき、静かで滑らかな走行を味わえる。エンジンの始動もとても穏やか。低回転域でエンジンが始動した場合、それに気付くことは難しいと思えるほど。
高速で走行している時もハイブリッドは有効。電気モーターが即時的にトルクを加算してくれる上に、112km/hまでならEVモードのままで走行も可能。
高速道路を一定速度で走らせているときに、アクセルペダルを素早く戻すとEVモードに切り替わることもわかった。そのまま緩やかに踏み込めば、エンジンを始動せずに電気の力で走ることができる。
一方で、ボンネットの中にはバッテリーを積むことができないから、荷室の容量が少し犠牲になっている。PHEVと呼ばれるクルマなら良くあることだが、カローラ・スポーツはPHEVではない。
燃費では優れた数字を返してくれる。以前にテストしていた同価格帯の1.5Lエンジンを搭載したフォード・フォーカスの平均燃費は、14.1km/Lを超えることはなかった。だがカローラの場合、現時点で17.7km/Lを上回っている。