試乗 トヨタ新型カローラ/ツーリング セダンとワゴン 価格/サイズ/内装を評価

公開 : 2019.11.04 19:50  更新 : 2021.12.28 00:16

ハンドリングの作り込み

中立付近のSAT(セルフアライニングトルク)が適切であり、中立を維持しやすく、路面反力も適度だった。

とてもいい感じなので、その旨を開発者に聞いたところ電動パワステのセルフセンタリング制御を行っているとのこと。こういった運転感覚の芸の細かさも新型カローラである。

カローラSの内装。ブラックのファブリックを基調に、U字パターンで張り分けた。
カローラSの内装。ブラックのファブリックを基調に、U字パターンで張り分けた。

パワーフィールは正直なことを言えばちょっと古臭い。スロットル大開制御などで巡航回転数を下げる、いわゆる今風の制御特性。ほかの1.8L車と比較してもドライバビリティも余力感も水準以上なのだが、RAV4などに搭載されるダイナミックフォースエンジンに比べれば踏み込み直後の反応が鈍く、回転も上昇しやすい。

あくまでもトヨタ車相対だが、そのため半世代前の印象を受けてしまう。好意的に捉えるなら慣れ親しんだドライブフィールと今風の制御のウェルバランス、先進感を求めるならハイブリッドをということだろう。

なお、セダン/ワゴンにも1.2Lダウンサイジング・ターボが設定されているが、6速MTのみの設定となり、グレードもW×Bに限定されている。

試乗 WxB スポーティモデル

前述したとおりW×Bはセダン/ワゴンに設定されたスポーティモデル。専用のサスチューンに215/45R17を履いている。

ワゴンのハイブリッド車でW×Bと標準系サスのSを乗り比べてみたが、予想以上にW×Bの乗り心地がいい。215/45サイズと言えばタイヤのハイトは100mmを下回る。当然、タイヤの縦バネは硬くなり、ふつうならガツガツと路面感覚が強くなる。そういった荒さが少ないのだ。

カローラツーリング・ハイブリッドWxB(ワゴン)の後席。
カローラツーリング・ハイブリッドWxB(ワゴン)の後席。

入力に対するストローク量では明らかにW×Bが硬く、基本操縦特性は共通しているものの操舵初期から前輪に荷重を掛けて回り込む感覚がスポーティモデルらしい。

セダンと比較すれば前輪の接地感が高まっているが、やはりSは標準系らしくよく言えば穏やかだが、ちょっと緩い操縦感覚。W×Bは高速ツアラーらしい硬さを持ったアシなのだ。

新サス 劇的な効果

ところがこういったサスやタイヤが苦手なパッチ路でも角張った突き上げが少ない。

5ドアHBのZで新旧サスを乗り比べてみたが、面取りされた突き上げ感とでも言うか、上下動の量は同じでも頭部を揺するような衝撃のピークが新型は大幅減。

カローラツーリング・ハイブリッドWxB(ワゴン/1.8L+HV/FF):279万9500円。
カローラツーリング・ハイブリッドWxB(ワゴン/1.8L+HV/FF):279万9500円。

曰く、ごく速いピストンスピードでの減衰力の低減と伸び側と同等まで高められた縮み側減衰力によるもの。たった、それだけで? と思えるほど差は劇的だった。

この乗り心地向上手法は全モデルに採用されているのだが、元々のサスチューンや装着タイヤの違いからハードサス仕様になるほど効果的。

W×Bのフットワークは原則的には高速ツーリングやハイアベ山岳路走行での操安を重視するドライバー向けだが、同乗者視点でも内外装仕様を気に入って選んだユーザーでも我慢を強いるほど厳しい乗り心地ではない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    川島茂夫

    Shigeo Kawashima

    1956年生まれ。子どものころから航空機を筆頭とした乗り物や機械好き。プラモデルからエンジン模型飛行機へと進み、その延長でスロットレーシングを軸にした交友関係から自動車専門誌業界へ。寄稿していた編集部の勧めもあって大学卒業と同時に自動車評論家として自立。「機械の中に刻み込まれたメッセージの解読こそ自動車評論の醍醐味だ!」と思っている。
  • 撮影

    前田惠介

    Keisuke Maeda

    1962年生まれ。はじめて買ったクルマは、ジムニーSJ30F。自動車メーカーのカタログを撮影する会社に5年間勤務。スタジオ撮影のノウハウを会得後独立。自動車関連の撮影のほか、現在、湘南で地元密着型の写真館を営業中。今の愛車はスズキ・ジムニー(JB23)
  • 編集

    徳永徹

    Tetsu Tokunaga

    1975年生まれ。2013年にCLASSIC & SPORTS CAR日本版創刊号の製作に関わったあと、AUTOCAR JAPAN編集部に加わる。クルマ遊びは、新車購入よりも、格安中古車を手に入れ、パテ盛り、コンパウンド磨きで仕上げるのがモットー。ただし不器用。

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