ロードテスト BMW 1シリーズ ★★★★★★★☆☆☆

公開 : 2019.11.09 11:50  更新 : 2019.12.10 16:31

FF化に顔をしかめる伝統主義者も多そうな新型1シリーズですが、それ以上にプレミアムハッチとしての高い完成度を支持するユーザーは多いはず。過去のモデルを超える販売面の成功を収めうるクルマとなっています。

はじめに

BMWが、プレミアムコンパクトハッチバックを後輪駆動で造ろうと決めたのは、2世代前の初代1シリーズが登場するより前のこと。さらにいうなら、プレミアムコンパクトというジャンルが生まれるよりも前のことだ。

1993年、アウディが初代A3を投入するより3年、メルセデス・ベンツが初代Aクラスを世に送り出すより4年先んじてデビューしたのが、3シリーズ・コンパクトだった。後輪駆動の理想的なハンドリングを備えたモダンな乗用車で、しかもそれまでのBMWよろ魅力的な価格で、走り志向のドライバーに訴求したモデルだ。

その路線を踏襲したのが、2004年に発売された初代1シリーズ。実質的な先代モデルである3コンパクトよりボディスタイルは拡充。しかし、メカニカルなコンポーネンツは変わらず兄貴分の3シリーズと共用し、BMWのトレードマークというべき後輪駆動で、2000年代の間にどんどん一般的になっていったこのマーケットでの差別化を図った。

はじめのうち、1シリーズの販売は好調で、11年デビューの2代目もFRレイアウトを採用。しかし、ミュンヘンも徐々に気付くようになってきた。エンジン縦置きFRは、成功を呼ぶより、このクルマの発展の足かせとなっていることに。

1シリーズの将来像を描く段になり、当時のCEOだったノルベルト・ライトホーファーはジャーナリストたちに語った。1シリーズのオーナーの80%は、自分の愛車が前輪駆動だと信じ込んでいるのだと。

その当時、2014年にBMWは前輪駆動ベースのコンパクトカー開発に着手。プラットフォームは、ミニブランドのものとシェアした。そして、2シリーズ・アクティブツアラーやX1、X2の発売後、ハッチバックの1シリーズもその流れを追う。かつては絶対的なセールスポイントとみなされた機械面のアイデンティティを捨てたのだ。

かくして新型1シリーズは、フォルクスワーゲングループのゴルフ系モデルと真っ向組み合うFFハッチバックとなった。ミュンヘンにおいては大変革だが、このクラスではむしろ典型的なメカニズムを採用することとなったこのクルマに、コンパクトなBMWのDNAは生きているのだろうか。

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