初代 マツダ・ロードスター 素晴らしき英国スポーツカーの継承者 後編
公開 : 2019.11.16 16:50 更新 : 2021.12.09 23:14
車重増に合わせて1.8Lでパワーアップ
1994年になる頃には自動車を取り巻く安全性の条件は厳しくなり、マツダ・ロードスターは車重増に迫られる。必要な安全基準を満たすためには、35kg分の装備を追加する必要があった。そこでマツダがモデル中期に与えた決定が、パワーアップ。
再びマツダは、ファミリアGTへ搭載されていたツインカムの1839ccユニットに目をつけた。排気量が大きい分、14psが追加され、NA2型となったベースモデルの最高出力は130psにまで上昇。1.6Lエンジンモデルは、95psにパワーダウンされ、エントリーグレードとして残った。
パワーアップだけでなく、1.8Lモデルにはより強固なボディシェルも与えられた。シートベルトの取り付け部分にはブレースバーを、フロントとリアにパフォーマンスロッドを追加し、ねじれ剛性を高めている。
オプションでトルセン式のLSDも採用され、ブレーキは前後ともに20mm大径のディスクを装備。ホイール幅は5.5Jから6.0Jへと広げられた。これらの改良に加えて、日本市場にはRSリミテッドと呼ばれる特別グレードが用意された。これは今も最高のロードスターの1つとして高い評価を集めている。
RSリミテッドが製造されたのはわずかに500台。すべてのボディは緑がかった濃い青の、モンテゴ・ブルーマイカが塗られている。英国にはグレインイーグルス特別仕様に設定された色だ。
ロードスター随一の豊かな味わい
1.8Lエンジンには、より鋭いレスポンスのために軽量なフライホイールが選ばれている。トルセン式LSDが標準装備され、ファイナル比は4.3:1に設定。フロントのアンチロールバーばやや太く、リアはやや細いものに変更されている。
足元はBBS社製のクロススポーク・アルミホイールが引き締めていたが、最も注目のアイテムだったのが、レカロ社のカーボンケブラー製バケットシート。背もたれは固定されているが軽量で、いま取り付ければ1000ポンド(14万円)近い費用が必要となる。
単に高価なだけでなく、標準のファブリックシートや限定モデルのレザーシート比べても、と同じくらい快適なところが凄い。身体のホールド性も高く、ロードスター随一の豊かな味わいを持つRSリミテッドの操縦性を存分に引き出せる。他の2台を尻目に、RSリミテッドを操る喜びに心が奪われた。
1.8Lユニットは、1.6Lユニットほどレスポンスが鋭くないが、軽量はフライホイールのおかげでエネルギッシュ。より熟成された雰囲気もあり、コーナーの出口では、中回転域からパワーを活かした走りができる。
ビルシュタイン社製のサスペンションは、操縦性と快適性とを絶妙にバランスさせている。試乗したサーキットのきついコーナーや、うねりがある路面でも、クルマはバランスを一切崩さなかった。