今あらためて試乗 BMW Z3 小粋で軽快、「これで充分」と思える懐かしさ

公開 : 2019.11.10 05:50  更新 : 2021.10.11 14:52

完璧すぎない感じがちょうどいい

Z3はMの冠が付かなければ決して速いクルマではない。

コーナリングに関しても4気筒モデルは良く言えば軽快だが、悪く言えばこれがBMW? というくらい手ごたえが希薄。

丸みを帯び、フェンダーの盛り上がりがグラマラスなリアビュー。シートの後ろのロールバーは超高級車では格納式になっているが、Z3は固定式。ドアやリアリッドの目立つ鍵穴や細身のアンテナが懐かしい。
丸みを帯び、フェンダーの盛り上がりがグラマラスなリアビュー。シートの後ろのロールバーは超高級車では格納式になっているが、Z3は固定式。ドアやリアリッドの目立つ鍵穴や細身のアンテナが懐かしい。

その点今回の6気筒モデルはBMWらしい質感が感じられるのだが、それだって17歳という実年齢よりいくぶん古く感じられる。

けれどしばらく乗っていると、Z3にはオープンスポーツカー好きを虜にする軽快感やミニマリズムがギュッと凝縮されていることがわかってくる。

小さなオープンスポーツカーの魅力の源はコレなのだと思う。

今日は山道やサーキットに行くぞ! という特別な日だけでなく、近くのコンビニにお昼を買いに行ったついでに、少し遠回りをしたくなるような気さくな雰囲気、親しみやすさ。

オープンカーにはロードスターやカブリオレ、スパイダーバルケッタなど様々な別称がある。これらには総じて小粋で簡素といった意味合いが含まれているように思う。

だがその代わりにネオクラシック世代の「屋根開き車」は少し雨漏りしたり、風の巻き込みが凄かったりと、我慢しなければならないこともあり、それも含めて楽しむ乗り物だったのである。

BMW Z3は持ち合わせているが、機械的に完璧になり過ぎた現代のオープンスポーツカーにないものは実は少なくないのだ。

「オープンカーってコレくらいがちょうど良い感じでしょ?」とZ3が語りかけてくる。今になってみれば、その通りだと思う。

記事に関わった人々

  • 吉田拓生

    Takuo Yoshida

    1972年生まれ。編集部員を経てモータリングライターとして独立。新旧あらゆるクルマの評価が得意。MGBとMGミジェット(レーシング)が趣味車。フィアット・パンダ4x4/メルセデスBクラスがアシグルマ。森に棲み、畑を耕し蜜蜂の世話をし、薪を割るカントリーライフの実践者でもあるため、農道のポルシェ(スバル・サンバー・トラック)を溺愛。
  • 神村聖

    Satoshi Kamimura

    1967年生まれ。大阪写真専門学校卒業後、都内のスタジオや個人写真事務所のアシスタントを経て、1994年に独立してフリーランスに。以後、自動車専門誌を中心に活躍中。走るのが大好きで、愛車はトヨタMR2(SW20)/スバル・レヴォーグ2.0GT。趣味はスノーボードと全国のお城を巡る旅をしている。

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