クルマ、上級グレードから先に販売 なぜ? 輸入車/国産車に傾向の違い 正しい買い方は
公開 : 2019.11.17 06:00 更新 : 2021.10.22 10:17
発売から時間を経過して生まれる価値も
VWゴルフのディーゼルのように、次期型が発売される直前に新しいエンジンを追加するのはどうなのだろう。
多くのユーザーは、新型エンジンを搭載した次期型が欲しいのではないのか。
「輸入車は、日本車に比べると趣味性の重視されるカテゴリーです。それぞれの世代にファンがいるのです。したがってお客様が海外で発表された次期型と、従来から売られている現行型を比べて、後者を選ぶことも多いです」
「また輸入車はほぼ毎年改良を行うから、乗り心地などはフルモデルチェンジを受ける直前が一番充実しています」
「このような理由から、VWゴルフのディーゼルなどは、フルモデルチェンジの直前にグレードを加えても着実に販売できるでしょう」
VWの場合、北米における排出ガスの不正問題でディーゼルの投入スケジュールが乱れた事情もあるが、輸入車の商品特徴も影響している。
安全装備などは、フルモデルチェンジをしないと、抜本的に進化させられないことが多い。その意味では「熟成されたモデル末期車」が必ずしも良いとは限らないが、乗り心地などの感覚的な性能は時間が経過するほど洗練されていく。
発売から時間を経過して生まれる価値もあるから、フルモデルチェンジを控えた時期に新しいディーゼルを加えても、相応のメリットが生じるわけだ。
輸入車と事情が違う日本車のグレード追加
先に述べた通り、日本車は発売時点で大半のグレードを用意する。少しずつ追加して、グレード構成を整えることは少ない。
それでも発売後にグレードを加えることはある。ユーザーがグレード構成に不満を感じたり、ライバル車との競争力を強める必要が生じた時だ。
例えばC-HRは、2016年12月の発売時点では、バイビームLEDヘッドランプが上級のGとG-Tのみに15万1200円オプション設定されていた。SとS-Tはハロゲンランプしか装着できなかった。
C-HRは趣味性の強いSUVだから、ハロゲンヘッドランプでは物足りない。そうなるとGとG-Tを選ぶことになり、上級のシート表皮やイルミネーションが不要なユーザーにはムダが生じた。
また発売時点では、1.2Lターボは4WD、ハイブリッドは2WDと区分され、2WDで十分と考えるユーザーが価格の安いターボを選びにくかった。
そこでまずは2017年11月に特別仕様車のLEDエディションを設定して、ベーシックなSとS-Tも、バイビームLEDヘッドランプを装着できるようにした。しかも価格は2万4000円の上乗せに抑えたから、オプション価格の15万1200円に比べて大幅に安くなった。
2018年5月には一部改良を行い、特別仕様車となるLEDエディションの代わりに、LEDパッケージをグレードとして加えた。またターボにも2WDを用意して、価格帯を下側に広げている。
このようにC-HRは、特別仕様車の設定、さらに一部改良でのグレード追加を経て、ユーザーの不満を解消していった。日本車にはこのようなパターンが多い。
スバルなどは、車種の数が少ないこともあって、フルモデルチェンジの直前までグレードや特別仕様車を追加する。
例えば現行インプレッサは2016年に発売されたが、先代型がモデル末期であった2015年にハイブリッドを加えた。
先に述べたゴルフのディーゼルのようなタイミングで、グレードを追加したわけだ。