素晴らしいの一言 アストン マーティン・ヴァンテージ・マニュアルに試乗
公開 : 2019.11.19 09:50
引き締められたサスペンション
アクセルペダルを少し強めに踏むだけで、リアは簡単にラインから外れスライドし始める。その挙動は穏やかで、漸進的。落ち着きがあり、不安ではなく興奮を誘う。
ステアリングは操舵時の重さもレシオの設定も、しっかり詰められている。ロックトゥロックは2.3回転で、過敏すぎず神経質過ぎず、レスポンスも程よく素早い。カウンターを当てた時の抵抗感も好印象だ。
恐らくポルシェ911の方が、情報量や不安感のなさでは上をいく。操縦性の精度や全体的なバランスでも優れているとはいえ、ヴァンテージも充分に引けを取らない。
乗り心地はやや引き締められた。舗装が荒れていたりツギハギだらけの区間では、落ち着かない乗り心地になり、路面の影響をしっかりと受ける。それでも、滑らかな高速道路などでは、運転が不快にならないだけの柔軟性はしっかり確保されている。
そのぶん、ヴァンテージのコーナリングはフラットでスムーズ。腕を試されるような曲がりくねった道を、クルマと一体になって流れるようにドライブできる。英国に持ち帰ってしっかり確かめたいところだ。
そして新たに獲得したマニュアル・トランスミッションは素晴らしいの一言。1速がHパターンの外に位置するドッグレッグ・レイアウトの操作には少しの習熟も必要だが、それだけの価値はある。
V8エンジンをダイレクトに味わえる
AMG製のV8エンジンとの組み合わせによって、緻密で有機的なメカニズムをダイレクトに味わえるだけでなく、珠玉のエンジンの実力を引き出すことができる。放たれるサウンドやパワー感との一体感とも、とてもよくマッチしている。
手のひらにしっくり馴染むシフトノブを掴み、一切の引っ掛かりもなく上下左右に動かす。ドライバーの意志のままに、強力なパワーを決定的に操れる。
外れた場所にある1速から2速へシフトアップする時は、ニュートラルに戻りたがる癖がある。だが低速トルクのおかげで、何の不都合もなく2速発進を許容してくれる。他のMTよりも、操作する達成感は大きい。
ベッカーも「ドッグレッグ・レイアウトには慣れが必要ですが、それを自在に操るというプロセス自体が、満足感を付加していると思います」 と話していた。
エンジンもファンタスティック。ATほど速く走れないとしても、0-100km/h加速は4.0秒。まだ充分に速い。MTなら一般道でエンジンの力を存分に味わえないという、煮え切らない気持ちも湧きにくい。
運転免許にレッドカードが出ることなく、低いギアを使ってエンジンをしっかり楽しむことができる。怒り狂ったようなバリトン・ノイズも気持ちを高ぶらせてくれる。
今のところ、MTで手に入るスーパースポーツは、限定モデルのヴァンテージAMRだけ。生産台数は200台のみで、価格は14万9995ポンド(2099万円)から。2020年4月になれば、ヴァンテージのマニュアルが発売となるが、AMRと同じスペックではない。