【いま注目の存在】ボルボの現在 そして未来 電動化への決意は揺るがず 前編
公開 : 2019.12.26 10:50 更新 : 2019.12.26 11:15
2010年以降、見事な復活劇を見せているボルボに注目してみました。ブランドの伝統とも言える優れた安全性はそのままに、大胆な電動化を進めるボルボでは、その比較的小さな規模を活かしたスピードで、時代を変革するパイオニアになることを目指しています。
自らを変革
いまボルボは世界でもっとも注目すべき自動車メーカーだ。
ボルボといえば、安全で信頼性の高いクルマを創り出す、安全で信頼できるメーカーだが、もはやそれだけの存在には留まらない。
このスウェーデン企業はダイナミックで破壊的な自動車メーカーへと自らを変革することに成功したのであり、既存の秩序に挑戦しながら、スタイリッシュなモデルを次々と送り出している。
その一例が、最高速を競う替わりに導入する速度制限であり、ボルボではドライバーの安全性に問題があると判断した場合、運転を禁止するセンサーの導入まで検討している。
さらに、他のメーカーが新たな排ガス規制への対応に苦慮するなか、ボルボでは規制当局の要求に10年も先行して、CO2をまったく排出しない自動車づくりを実現しようとまで計画している。
知る人ぞ知る存在だったパフォーマンスラインを、独立したEV専用のプレミアムブランドへと変えるとともに、自らはEVに注力できるよう内燃機関部門を分離し新会社を設立すると発表している。
米国に生産拠点を設けるとともに、Amazonを通じた試乗申し込みを可能にしている。
近い将来、クルマの購入方法がサブスクリプション方式に変わると信じるボルボでは、自動運転の未来を決めるのは市場だとしており、主要なモーターショーで「車両のないブース展示」まで行っている。
救世主登場
上級市場への移行にも成功しており、プレミアムなドイツブランドに対抗する存在として、SUVを数多くラインナップするとともに、その車両生産数を2倍近くの60万台へと増加させている。
次なる取り組みとして、今後数年以内ではブランド初となるEVモデルの登場予定がないにもかかわらず、ボルボでは2025年までに販売車両の半数を完全なバッテリーEVにするという目標を掲げている。
こうした一連の変化は2010年以降の出来事であり、ビッグスリーの一角、フォードが当時苦境にあったこのブランドのジーリーホールディングへの売却を決定したことがキッカケだった。だが、ボルボを買収した時のジーリーホールディングは、欧州市場では単なる模倣ブランドとしてしか認識されていなかった。
当時成長が見込まれていた「プレステージ」なブランドに加えるべくフォードが約65億ドルでボルボを買収したのは1999年のことだった。以降ボルボのモデルラインナップは劇的に拡充されることとなったが、フォード製プラットフォームを採用したことで、長く親しまれてきた独自性の大半が失われている。
それでも、ボルボ復活に向けた計画は、自らを上級市場に移行させるとともに、SUVのXC60発売したフォード時代終盤には描かれていたのだ。
だが、2008年に金融危機が発生するとフォードはボルボ売却を決意し、噂によればフォルクスワーゲンやBMWを含め、数多くのメーカーが興味を示したと言われているが、最終的にジーリーホールディングが11億5000万ドルでこの買収合戦に勝利している。