911の姿をしたモンスター ルーフSCRとCTR アナログ・スーパーカーの挑戦 後編

公開 : 2019.11.30 16:50

驚くべきリニア性を持つ高精度の駆動系

5500rpmを過ぎると吸気ノイズが桁外れに高まり、BMW M3 CSLの3.2L直6のような、独特のハウリングが伴う。SCRプロトタイプの方がわずかに荒々しい。8500rpmのレブリミットに迫るにつれ、フェラーリ製12気筒に匹敵するような、硬質な咆哮へと高まっていく。

アクセルペダルを離しクラッチを切り離すと、まるで重さがないように回転数はストンと落ちる。そして再び加速させる。新しいカーボンファイバー製シャシーに、強力なエンジンが組み合わさり、SCRは激しく速い。

ルーフSCRプロトタイプ
ルーフSCRプロトタイプ

驚くべきリニア性を備えた、極めて精度の高いパワートレインだ。これほどの速さは必要なのだろうか。だが、ステファン・ロザーがイエローバードを駆りニュルブルクリンクを走ったときのように、客観的な理由は重要ではない。

オレンジ色のSCRプロトタイプをファクトリーに戻す。1978年、ルーフはフロントエンジンのポルシェ928の登場と、終焉を噂された911に危機感を感じ、CSRを生み出した。実際911が消えることはなかったが、ルーフSCRプロトタイプからも近い共通性を感じた。

新しいCSRは、純粋なシャシーとMT、コンパクトなボディに自然吸気エンジンを備えるという稀有なパッケージングで現代に生まれた。アナログなスーパーカーが終演を迎える中でのチャレンジャーだ。

少量生産に留まるルーフには、環境規制のルールは適用されない。イエローバードの血統を受け継ぎ、高圧のターボから720psを繰り出すCTRは、われわれの注目を集めるに違いない。

今回は確かめることができなかったが、少なくともSCRが本物の宝石のように光り輝く存在だということは、確信が持てる。

ルーフが生み出した歴代の名車

CSR 1978年

ルーフが高出力のターボエンジンで名を馳せる以前に生み出したのが、美しいCSR。ポルシェ製の自然吸気エンジンは、3.0Lから3.2Lへ排気量をアップ。最高出力は180psから217psへと高められ、930ターボのような走行性能を与えた。

ポルシェの911がターボなしでこの馬力を超えるのは、グレード間の階層を維持する理由もあって、CSR登場の6年後となった。

CTR「イエローバード」 1987年

CTR「イエローバード」 1987年
CTR「イエローバード」 1987年

ルーフを象徴する1台。3.4Lの水平対向6気筒エンジンにツインターボをプラス。話題をさらったニュルブルクリンクでの走行映像は、今もユーチューブで見ることができる。ルーフの公称最高出力は475psだったが、実際は500psを超える馬力を発揮していた。

グループCカー並のブレーキと、ダンロップ製のタイヤが、クルマが暴れるのをなんとか防いでくれる。「2台目ゴルフGTIが超高速で、341km/hで走る姿を想像してみてください」 とは、リースミュラーの例えだ。

CTR2 1995年

993型の911をベースにして誕生したCTR。1997年の国際ヒルクライムレースでは、700ps以上へとチューニングしたエンジンで、2位を獲得している。このヒルクライムには、ちゃんとナンバープレートを付けて参加している。

想像通り、充分に速かった993型911ターボ以上に速く、CTR2の最高速度は342km/h。0-161km/h加速を7.6秒でこなす。

CTR3 2009年

ルーフを21世紀のハイパーカーとして認識させることに貢献したミドシップのCTR3。700psの水平対向6気筒ツインターボエンジンを搭載し、6速シーケンシャル・ミッションとドッキング。後輪を駆動する。最高速度は378km/hを打ち立てるなど、スペック的にも充分ハイパーカーだ。

そして何より、ハンドリングの素晴らしさが最大の特徴でもある。驚くほど優れたドライバーズカーだった。

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