シトロエン誕生から1世紀 英国編集部の記憶に残るシトロエン 12選 前編
公開 : 2019.12.01 07:50 更新 : 2021.03.05 21:43
シトロエン11CVコマーシャレ
サイモン・テイラー
風変わりでありながら実用主義という、フランス生まれのシトロエンを最も良く体現したクルマが、11CVの商用モデル。ロングホイールベース版のファミリアーレには3列シートモデルも存在していた。だがコマーシアレは、フロントシートより後ろは荷室。
ボディの後ろには分割式のテールゲートがついていた。後にハッチバックスタイルに変わる。肉屋や食料品店、ワイン商などがドライブし、配達中はトラクシオン・アバンから受け継ぐ優れたロードホールディング性を楽しんだだろう。レースチームのサポートカーにもちょうど良かった。
用途の可能性は無限大。シトロエンの広告写真には、農夫がリアシートに羊の群れを乗せているのが写っている。こんな使い方もありだ。
シトロエンDSサファリ
ジュリアン・バルメ
いつも実用的なロングルーフにこだわってきた。アメリカ車の中にそんなモデルが多いが、ヨーロッパブランドのステーションワゴンが、特にわたしの興味を引きつける。
55年前、父からコーギー製のミニカーを買ってもらうと、アメリカ製のライバルモデルと積載量の比較を真剣にした。積載量では勝てなくても、ルーフにはスキーラックが載り、1964年の冬季オリンピックのロゴがボンネットに入っているミニカーは、理想的なミニチュアだった。
実物大のステーションワゴンも印象に残るクルマだ。わたしの友人でおちゃめなシトロエン・マニア、ステファン・ブルはDS21サファリを仕事の足に利用している。彼の仕事は、歴史的な建物の修復を行うこと。
フテファンのガレージには、トラクシオン・アバン・ライト15とSMが停まっている。そんなダブルシェブロン・ファンの彼にはHバンにも乗って欲しいところ。だがDSサファリの古いタイムマシンのようなインテリアは、信じられないほど優雅でもある。
シトロエンSM
マーティン・バックリー
SMはお気に入りのシトロエン。DSも引けを取らないくらい好きだ。この未来的なデザインのクーペが、誕生から来年で50年を迎えるなんて、信じがたい。
SMはどんなドライバーでも受け入れられるクルマではない。安定性に欠けるステアリングとブレーキ、全幅の広いボディに左ハンドル車だけ。その理由も良く分かる。それに一度慣れてしまえば、SMは素晴らしいクルマだ。過小評価されているといっても良い。
SMを選ぶなら、トランスミッションはマニュアルで、レザー内装。エンジンはキャブレターの方が好み。わたしは幸運にもしばらくの間乗る機会に恵まれた。もう一度乗りたいか、と聞かれれば即答はできないが、SMを運転できて嬉しかったことは間違いない。