シトロエン誕生から1世紀 英国編集部の記憶に残るシトロエン 12選 後編
公開 : 2019.12.01 16:50 更新 : 2021.03.05 21:43
シトロエンSMマイロード
ジェームズ・マン
1971年当時、フェラーリ・デイトナと同等の価格をつけた、アンリ・シャプロンが設計したSMマイロード。上品なフレンチを切り取ったようなクルマだ。
1968年にシトロエンはマセラティ株の60%を取得。より多くのパワーをクルマに必要としていたのだろう。結果、DSに搭載されたのはイタリア製エンジンとなった。
シトロエンのラグジュアリーなSMのコンバーチブルが製造されたのは6台限り。2.7LのV6エンジンを搭載したが、うち1台は消失した。
シャプロンは他にもDSをベースにした特別なシトロエンを数多く制作している。DS21のロングホイールベース版は、シャルル・ド・ゴールの大統領車両となった。後にSMをベースとした、ジョルジュ・ポンピドゥー用の大統領車両も2台製造している。
シトロエン・タイプH
グレッグ・マクレマン
移動式のコーヒーショップや、ハンバーガーのキッチンカーなど、長い間のシトロエン・ファンとしては、近年の人気も驚きではない。
軽量ながらリブ加工の入った平面ボディ。高さが180cmある荷室は実用的なフラットフロアだし、機能的な独立サスペンション。優れたパッケージを持つタイプHバンは成功し、ほぼ変わらない内容で1947年から1981年まで製造された。これに匹敵する記録を持つクルマは少ない。
加えてフォルクスワーゲン・ビートルやオリジナルのミニ、シトロエン2CVやモーリス・マイナーなどと並ぶ、アイコンと呼べるほど個性的なボディデザインも特徴だ。カスタムされていない、オリジナルのままのバンはすっかり珍しい存在になった。おかげで、一層特別感が高まっている。
シトロエン・アミ6
スティーブ・クロップリー
正直、シトロエン・アミ6が量産されたこと自体が奇跡としかいいようがない。シトロエン2CVをベースに、逆スラントしたリアウインドウを備えた奇妙なデザインのサルーン。リアガラスの角度は、わずかに内向きなのではなく、強いフランスの意思を持って付けられている。
アミ6のプロトタイプを評価する、シトロエンの上層部とデザイナーの気持ちを想像すると、笑顔になてしまう。当時、フランス市場が必要としていたデザインのクルマなのだったのだろう。
アミ6は、風変わりなフランス・デザインが生まれた時代の中でも突出している。最も輝かしい存在だ。実際、このクルマは17年にも渡って製造が続けられ、時にはフランスで最も売れたモデルにもなった。
2CVがベースだということに口を閉ざすことで、今では本当の傑作となった。