長期テスト フォルクスワーゲン・ゴルフGTI(最終回) 40歳を迎えてもGTI
公開 : 2019.11.23 10:50
適した道で、適した走らせ方をすれば
エンジンは230psの2.0TSIユニット。パフォーマンス・パッケージを選ぶと15ps上乗せになるが、選んでいない。ブレーキとデフも強化品が付いてくるが、標準仕様の方がいいと思う。実際そうだった。
2.0TSIユニットの仕上りは良い。シャシー性能をしっかり引き出せる、適切なパワーとトルクを発揮してくれる。しかも現実環境で扱いやすい。多くのライバルは過度にブーストアップされたターボエンジンを搭載し、パワーを稼いでいる。だがGTIの過給圧は軽く、レッドゾーンまで気持ちよく回せる。
ゴルフGTIは自然吸気のホットハッチのようにすら感じられた。エンジンを引っ張って、回転数を保ち、パワーを最大限に活かす。GTIを郊外の道で楽しむには、エンジンの回転数に気をかける必要があるが、その勢い感こそが喜びだった。
3500rpmを超えると、他のゴルフと似た雰囲気だったシャシーはGTIへと変化する。本当に運転が楽しい、本物のホットハッチだ。
ゴルフGTIには楽しさが足りない、という感想の多くは、第一印象に引っ張られているのではないだろうか。派手なボディキットも付いていないし、硬い乗り心地や騒がしい排気音もない。即時的満足感という点では薄いかもしれない。
だが、ホットハッチに適した道で、適した走らせ方をすれば、本物だということに気づく。目的の道路へ到着するまでには、GTIの別の資質も充分に味わえる。
40歳を過ぎても新しい時代が待っている
GTIは運転姿勢も乗り心地も快適。車内の質感や操作感も良好。控えめなルックスだから、赤信号のたびにスタートダッシュを競ってくる相手も寄って来ない。
8代目ゴルフの発売が迫る中で、7代目ゴルフのラインナップは絞られた。新しいWLTP値に合わせたテストを施行する費用を捻出することも難しいだろう。いま選べるGTIは、DSGの5ドアのみだ。
明確な目的が与えられた、ゴルフGTI TCRという選択肢もまだ残っている。老舗のロックバンドでも、アンコールになれば盛り上がる。間もなく次世代に置き換わるゴルフGTIだって、新しい時代が来たことを体験させてくれるはずだ。40歳を過ぎてもまだまだ楽しめる。
セカンド・オピニオン
ヒュンダイi30 Nのような生々しい興奮は薄くても、クルマとして無視できない実力の広がりを持っているゴルフGTI。インテリアも気に入っているけれど、電動ハンドブレーキは好きになれない。とはいえ、買うならゴルフGTIでしょう。(レイチェル・バージェス)