今あらためて試乗 シトロエン・エグザンティアSX(1995年) ひたすら平滑に、フトコロ深く

公開 : 2019.11.24 05:50  更新 : 2021.10.09 22:43

時間を超越したキャラクター

エグザンティアをしばらくドライブしていると、新車当時の記憶がよみがえってきた。

当時驚かされたのは、ハイドロの平滑な乗り心地がスピードを選ばないことだった。それこそスピードメーターの針が振り切りそうな領域でも、平滑さはそのまま矢のように直進する。

ショートデッキでハッチバック風のスタイリングをなっているリアだが、トランクは独立しており、見た目より広く感じられる。このクラスとしてはホイールべースは長い。
ショートデッキでハッチバック風のスタイリングをなっているリアだが、トランクは独立しており、見た目より広く感じられる。このクラスとしてはホイールべースは長い。    篠原晃一

決してパワフルではないが、一旦スピードに乗ると巡航がとても楽チン。エグザンティアのこのキャラクターは、歴代のハイドロ・シトロエンに共通している。

今回のエグザンティアSXの特徴である5速マニュアルのギアボックスも、ハイドロのキャラクターに合っている。1速ずつエンジン回転を引っ張るより、次々とシフトアップさせることで、アシの感触にマッチしたゆったりした優しい加速感が楽しめる。

ハイドロ・シトロエンをドライブしたことがない人にとって、エグザンティアは平凡なDセグメント・セダンにしか映らないだろう。

だがその乗り心地がこの上ないものであることは、かのロールス・ロイスがシトロエンに頭を下げ、特許技術を使用する許可をもらっていたという事実が証明している。

日進月歩の自動車界だが、それでもなお新しいから良い、古いからダメと一概に言えないところに、ネオヒストリック車の魅力、存在意義があるのかもしれない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    吉田拓生

    Takuo Yoshida

    1972年生まれ。編集部員を経てモータリングライターとして独立。新旧あらゆるクルマの評価が得意。MGBとMGミジェット(レーシング)が趣味車。フィアット・パンダ4x4/メルセデスBクラスがアシグルマ。森に棲み、畑を耕し蜜蜂の世話をし、薪を割るカントリーライフの実践者でもあるため、農道のポルシェ(スバル・サンバー・トラック)を溺愛。

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