ロードテスト BMW X4M ★★★★★★☆☆☆☆
公開 : 2019.11.24 11:50 更新 : 2019.12.10 17:53
意匠と技術 ★★★★★★★★☆☆
クーペSUVの急増ぶりは、このコンセプトが世の中に受け入れられてきたことを意味する。BMWは、X4をスポーツアクティビティクーペ(SAC)と表現するが、実質的にはそこまで特殊なものではなく、リアへ向かってスロープしたルーフを備える5座SUVにすぎない。エレガントなルックスを、後席スペースや荷室容量と引き換えに手に入れたSUV、ともいえる。
全長と全幅は、現行3シリーズと同等だ。しかし、ずっと引き上げられている全高はもちろん、大ぶりなエアインテークや21インチホイール、リアディフューザーやテールエンドのガーニーフラップといったアグレッシブなディテールもあって、かなり大きなクルマに見える。
つまり、見過ごしてしまうようなクルマではない。しかし、もっと気になる要素はボディワークの下にある。まずは、S58型6気筒だ。X4M40iのB58型がベースだが、ブロックやシリンダーヘッド、ピストンにクランクシャフトまで変更されたほぼ新設計ユニットである。
2基のターボチャージャーは電動アクチュエーターで制御され、吸排気系の改良もあって、X4Mで480ps、コンペティション仕様では510psを発生。もはや、M4GTSで用いられた冷却水噴射デバイスは不要になったそれは、BMW史上最強の市販6気筒となった。また、既存のS55型よりレッドラインは低い7300rpmだが、ピークトルクの発生域は広がっている。
トランスミッションは7速DCTから8速トルコンATへ変更され、出力はMxドライブシステムのトランスファーケースを経て、リアのアクティブMディファレンシャルへ至る。もちろんほかのMモデルSUVと同じく4WDのみの設定だが、トルク配分はリア寄り。アダプティブダンパーを備えたサスペンションは、ホイールコントロールやグリップ、スタビリティを最適化すべく修正が施されている。
パワフルなSUVはオンロード志向になりがちだが、それはX4Mにもいえること。標準装備のタイヤは、BMWのラインナップでも速い部類のセダンやクーペに装着されるようなミシュラン・パイロットスポーツ4Sだ。
懸念材料はウエイトだ。エアサスや四輪操舵といった重量のかさむデバイスを持たないにもかかわらず、X4Mコンペティションは公称1970kgにも達するのだ。もっとも、この手のクルマとしては特別重いというわけではなく、ステルヴィオ・クアドリフォリオとGLC63Sの中間に位置する。