ロードテスト BMW X4M ★★★★★★☆☆☆☆
公開 : 2019.11.24 11:50 更新 : 2019.12.10 17:53
操舵/安定性 ★★★★★★☆☆☆☆
サウンド面のキャラクターは控えめだが、ハンドリングのそれは恐ろしく感じられる。それが走りの前面に出てくると、なおさらそう思えてくる。まるで、やや飽きっぽいドライバーなら、ラウンドアバウトを70km/hで駆け抜ける以上にはエキサイトすることがないようチューニングされたようなクルマだ。
ステアリングはギアが速く、ほどほどに重く、フィードバックは多くはないがそこそこある。しかし、直感的だといえるようなものではない。
手加減なしに硬いサスペンションもあって、低速域では大きく背の高いクルマに予想するより俊敏だ。いつも通り、勢いのある方向転換のレスポンスには慣れるだろうが、それが心地よかったというテスターはひとりもいなかった。
幸いにも、M仕様の設定調整システムが備わっており、エンジンもトランスミッションも、サスペンションやステアリングも、すべて穏やかなセッティングにすると、どうにか日常遣いできるドライバビリティとマナーを得られる。
それでもテスター陣の中には、そのセッティングでもハンドリングが疲れるほど緊張感があり、苛立たしいほどに不自然だという声があった。また、ワイルドな状態では正真正銘のMモデルだと思えるが、いかなる場合でもBMWらしい高級車と呼ぶのはためらわれる。
そのワイルドさを発揮している間は、潤沢なグリップとトラクションを示し、スムースな路面では高いコーナリングスピードを保てるボディコントロールとハンドリングバランスをみせる。
タイヤの横グリップの限界を超えるほど加速するとアンダーステアへ向かうが、スタビリティコントロールが効けば急激にオーバーステアへ転じることは、アルファロメオやメルセデスAMGのライバルと大差ない。過度なまでにバランスはよく、エキサイティングなほどで、しかしとくに安定していて飛ばしたい気分にさせてくれるものではないのだ。
それらは、大きく、背が高く、重いSUVをスーパーセダンのように走らせようとした場合につきものの問題で、2019年現在の最新型となるトルクベクタリングや四輪駆動を与えられても変わらない。
B級道路におけるスタビリティは、平滑な路面でのそれほど秀でたものではない。その乗り心地は、大きく鋭い突き上げを受けると硬く激しやすくなり、キャビンの快適性は明らかに悪化する。スポーツセダンよりも悪路に強いことを期待してパフォーマンスSUVを購入しようというなら、X4Mでは要望に応えられないだろう。