マツダ次世代エンジン「スカイアクティブX」の仕組み 恩恵、特定ユーザーにのみ マツダ3試乗

公開 : 2019.11.26 11:30  更新 : 2021.10.11 13:50

ハードウェアで注目すべき3点

ハードウェアの構成で目立つのは
・コモンレール式インジェクター
・スーパーチャージャー(ヘリカルルーツ式)
・GPF
の3点。

インジェクターは噴射の精密制御が目的。理由は前述したとおり。

マツダ3スカイアクティブX
マツダ3スカイアクティブX

スーパーチャージャーは全域で吸入空気量(含EGR)を過多に保つため。吸気する大気量(酸素量)は最大2Lプラスα相応だが、EGRを含む吸気空気量で図ると全域で希薄燃焼状態になる。

最大トルクが過給2Lにしては控え目な22.8kg-mなのは全負荷域でも大量EGRを掛けているためである。

GPF即ちのガソリンの煤(未燃燃料)の濾過器を採用するのはちょっと不思議に思えた。沢山の煤が出るなら熱効率は低下。高熱効率はスカイアクティブXの狙いのひとつ、なぜ?

理解できて、初めてわかる価値

その答は単純だった。スーパーチャージャーを保護するため。大気とEGRが混ざった状態で圧縮するので、EGRに煤があるとスーパーチャージャーの耐久性を著しく損ねる。

そこで念のために少量の煤でも除去できるGPFを採用。なお、GPFは排熱による自己再生型である。

マツダ3スカイアクティブX
マツダ3スカイアクティブX

加えて電動化技術としてISGと24Vリチウムイオンバッテリー(SCiB)を用いたマイルド・ハイブリッドシステムも導入されている。

とまあ、エンジンの紹介だけで長々となったが、これはマツダ3スカイアクティブX車を評価する上で極めて重要。

「そんな凄い事をやっているのか!」と理解しないと価格を見てびっくりする……かもしれない。

「究極の素直さ」 理性では感心できる

「究極の素直さ」と表現すればいいのだろうか。誇張もなければ演出もなく、ひたすらドライバーの操作と感性に忠実であろうとするエンジンである。

セダンとファストバック(5ドア)で6速AT仕様と6速MT仕様に試乗してみたが、ミッションの得手不得手はない。

マツダ3の6速MT。
マツダ3の6速MT。

「素直」という語感からすればMTのほうが印象が良さそうだが、よさがわかりやすいがMTの醍醐味の欠くというのが正直な印象だ。

アクセルストローク全般において踏み込み量に応じたトルクをペダルの動きをなぞるように駆動輪に伝えていく。踏み込み直後を持ち上げたり盛り上がるような後伸び感もない。最大トルク発生回転数は3000rpmだが、最高出力発生回転数の6000rpmでのトルクを計算すると約21.5kg-m。

6000rpmまで回してトルク低下は6%弱でしかなく、回転域におけるトルク変化やドライバビリティの変化も少ない。

ただ、トルクの出方が綺麗すぎて感激を呼び起こせない。超ワイドスイートスポットであり、クルマの方からの「乗りこなし要請」は皆無。

付け加えるなら、こういったドライバビリティは実加速よりも体感加速が低い。それは誉められることだが、刺激や高揚感は乏しい。

理性は「凄い!」と言っているが、感情は反応が希薄なのだ。

記事に関わった人々

  • 前田惠介

    Keisuke Maeda

    1962年生まれ。はじめて買ったクルマは、ジムニーSJ30F。自動車メーカーのカタログを撮影する会社に5年間勤務。スタジオ撮影のノウハウを会得後独立。自動車関連の撮影のほか、現在、湘南で地元密着型の写真館を営業中。今の愛車はスズキ・ジムニー(JB23)
  • 川島茂夫

    Shigeo Kawashima

    1956年生まれ。子どものころから航空機を筆頭とした乗り物や機械好き。プラモデルからエンジン模型飛行機へと進み、その延長でスロットレーシングを軸にした交友関係から自動車専門誌業界へ。寄稿していた編集部の勧めもあって大学卒業と同時に自動車評論家として自立。「機械の中に刻み込まれたメッセージの解読こそ自動車評論の醍醐味だ!」と思っている。

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