4代目へ進化 アウディS8に試乗 571ps 新次元と呼べる走り 快適性も向上
公開 : 2019.11.28 09:50
インテリアの秀逸さはクラスを問わず
ダイナミック4輪ステアリング・システムは、前輪の切れ角を条件に応じて変化させるだけでなく、後輪にも舵角を与える。低速では前輪と逆に後輪が向きを変え、小回りを有利にし、高速域では前輪と同じ向きに角度がつけられ、安定性を高めてくれる。
アウディのハイパフォーマンス・サルーンは、これまでも控えめな見た目を持っていたが、今回も同様。4代目となったS8も、標準のA8と比べるとわずかにボディは筋肉質になっているものの、その差は僅かで、これ見よがしなところはない。
S8専用仕立てなところは、ルーバーが2重になったフロントグリルと、ワイドになったサイドスカート、アルミ風のミラーハウジングなど。楕円4本出しのマフラーカッターが、S8モデルであることを後ろ姿で物語る。
運転席のドアを開くと、車高が50mm自動で下がり、乗り降りを簡単にしてくれる。ドアを閉めると、エアサスペンションが膨らみもとに戻る。新しいシステムを内包することを示す、さりげない機能だ。
インテリアはエクステリアと同様に、標準のA8から細かな変更を受けている。個人的には、価格帯を問わず最高の仕上がりの1台だと思う。カーボンファイバーとアルミニウムの装飾トリムが加わり、新しいS8の雰囲気を一層引き立てている。
視覚的にも触覚的にも高級感あふれる素材に、シャープなグラフィックを表示するデジタルメーターと10.1インチのインフォテインメント・システムモニター。マルチファンクション・ステアリングホイールに、サポート性の良いスポーツシートが組み合わさり、運転環境としてはファーストクラスだと断言できる。
新しい足回りが叶えるこれまでにない走り
一般的な条件なら、変速も機敏でアウディの加速は極めて鋭い。そこでの主役は571psのV8エンジン。0-100km/h加速3.9秒でこなす、信じられなほどのパフォーマンスを見せつける。
滑らかなトルクコンバーター式の8速ATとクワトロ・システムが、最上級の高速クルージング時だけでなく、瞬発力の面でも重要な役割を果たしている。加えてスピーカーからはリアルな合成サウンドが聞こえてくるから、ドライバーを夢中にさせる雰囲気を作り出してくれる。
安楽至極のコンフォート+モードであっても、細かなアクセル操作での滑らかさは変わらず、スポーツモードで走らせている時とは別の豊かさがある。都市部ではエコモードを選択することで、シリンダー・オンデマンド機能により4気筒エンジンとして走行も可能だ。
新しいS8で最も注目するべきところが、予測型アクティブ・サスペンションと、ダイナミック4輪ステアリング・システムの獲得で得られた機敏な身のこなし。これまでにないドライバーとのコミュニケーション力と、レスポンスを獲得している。
5mを超えるボディにも関わらず、条件を問わず正確性に優れ、S8を自信を持って操ることができる。カーブの続くような区間でも、活気のある自然な振る舞いが味わえ、これまでの大型のアウディには備わっていなかった性格を得た。
サスペンションは毎秒18回の細かさで減衰特性を変化させ、オートバイのようにコーナーでイン側に傾けるような姿勢制御も実現。新しいS8は常に落ち着きのある、滑らかな走りを披露する。直進性の良さも引き上げられ、高速走行時での安定性は秀逸だ。